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香港労働法 Hong Kong Labor Issues #40 日本人のための香港労働問題研究:コロナウィルス等疫病蔓延下での労働者の対応・対処法

Updated: Jul 7


香港労働法 Hong Kong Labor Issues #40 日本人のための香港労働問題研究:コロナウィルス等疫病蔓延下での労働者の対応・対処法

10大香港労働問題


香港の一般的な労働問題(香港労働問題)は、平時や非常時を問わず、また組み合わせ、事の性質上の近似性、遠近の程度や関連性などの相互にオーバーラップする範疇を考慮しても、10大労働問題として概括できる。概念の上で必ずどれかの問題のケースと類型に関係している。非常時には、元からあるこれら労働者階級の困難が倍増すると言える。以下の問題の中で、殊に法定と裁量による休日が混在する中での休息日の選択権の問題が法制面で比較的難しい。


以下の問題は、主に契約の段階である程度労働者側を考慮した制約を受け入れさせる事で防げる。条例や判例以外では、契約内容が考慮されるからだ。そもそも契約内容自体に地雷となる後に管理職の人格とともに顕在化してくる問題点が埋め込まれていると言える。労働者が注意するべきは、そもそもこうした労働法上の穴を悪用して嫌がらせを自覚的にする様な管理職や企業というものは反社会的であり、文字通りの悪質さを体現している。それはビジネスとはまた異質の次元の問題である。


1、労組差別、

2、フリーランス形態による違法雇用、

3、休日労働賃金の計算方法、

4、休息日の選択権、

5、不当解雇による法定補償の回避、

6、香港で塩水漬けと言われる労務停止の手口、

7、資本家による一方的な契約内容変更、

8、賃金未払いの持続、

9、離職者に対する懲罰条項や制限条項、

10、分娩時での不当解雇や苛酷な待遇や嫌がらせ。


コロナウィルス等疫病蔓延下での労働者の対応・対処法

在宅勤務の場合の賃金不払い:雇用条例第64B条で賃金請求権を行使 (給与支払日より7日以内に支払いない場合など)こうしたケースでは相手が意図的、自覚的に不払いである事を証明する為に書面でのやり取りや記録が必要。


無給休暇の場合:雇用条例第31E條で停職・業務停止に該当するケースが多い。ホテルなどが行っているが、4週間無給休暇にする事で、停職・業務停止の概念に該当する。遣散費はこの場合法的に保証される。ここでは、それまでの賃金未払いが支払い期日を7日過ぎてもある場合は、上記の賃金請求の問題も発生するし、法的に賃金未払いの概念に該当する事で、給与支払い期日を一ヶ月を過ぎても未払いの場合、推定解雇の条件にもなってくる。通常解雇の場合の法定権益を請求する必要も出てくる。つまり、給与賃金の支払い期日を7日から賃金未払いに該当し、1ヶ月経過で推定解雇に該当する。


手口としては、遣散費や長期服務金を払いたくないから停職の手段を採用したりして、それらを放棄する事になる辞職を促すのが特徴である。労働者側は全ての条件を満たして種々の法定権益の請求が十分行える様になるまで待つべきである。香港の労働問題での労働者の法定権益はもっぱら金銭的な法定権益にのみ集約されていて、金で解決という側面に著しく思考も制度設計も限定されているのが消極的で、偏狭である。労働問題とその影響は、実際は単に金銭の面に社会的には限定されていないからである。金さえ払えば簡単で、全てよし、それだけでよしという個人主義的、一過性的な、短絡思考と視野がこの様な歪な労働環境を形成している。


雇用内容の一方的な変更:この状況下では、例えば減給がそれに該当する。雇用条例では、労働者の同意なくしては一方的な契約内容の変更ができない事が明記されている。減給をされたら、確実に反対の意思表示をした反対通知書を資本家側に提出しておき、後々に暗黙の内に同意したと解釈されない様にしておく。


整理解雇・会社倒産:当然、整理解雇より安くつく、普通解雇の手段や、停職手段を極力採用してくる。会社倒産に関しては任意倒産ではなく、強制執行でないと労働者側に不利であり、いつまでも賃金未払いが後回しにされてしまう。


労災(職業病):現在武漢新型コロナウィルスは労災認定された病気ではない点が問題になっている。緊急法でこの新疫病の労災認定をする必要がある。日本でも同様。労災は常に労災に該当するリストに新しい伝染病を明記しないと法的には労災による保護の対象にならない不都合がある。香港が、いかに労働者階級の人権を軽視している社会かが分かる。


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何栢良:促請政府緊急修例 新冠肺炎列職業病

http://www.hkcna.hk/content/2020/0224/810504.shtml


労災保険民間で購入する労災保険の額外での補償がなく、この武漢新型コロナウィルスが保証外になっている問題が指摘されている。これは、旅行保険も同様に額外補償の対象外となっている事が報告されている。


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https://www.hk01.com/財經快訊/430494/武漢肺炎-美聯金融-大部分旅保-勞保不包新肺炎


失業保険制度、失業保障制度、失業援助金制度:香港には存在しない。2019年6月以来の持続する暴動下で提唱されたが、労工処はコロナウィルスの感染が拡大している2020年2月下旬現在も人手不足を理由に設置を拒否している。防疫抗疫基金とは、香港政府が300億ドルで主に企業を救済する為の緊急処置であるが、相変わらずトリクルダウン的な政策思考であり、企業を助けて雇用を保障するという誤った、善意志を盲信する観念に取り憑かれている。基本的に用途に制約がない手当になるので、企業資本家が利潤を重視するか、単に労働者の生活を重視するかと言えば、前者なのは当然である。一方的な企業への利益分配になるだけである。実際企業の銀行口座に入るのであり、労働者への直接の給付になっていない


これは、同様にネオリベラリズム社会である台湾の嚴重特殊傳染性肺炎防治及紓困振興特別條例の労働者保障を包括した制度的改善策とは好対照である。


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政治解讀 300 億「防疫抗疫基金」

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【肺炎.深度】無薪假、八折糧殺到 抗疫基金救不了的兩大死症

https://www.hk01.com/周報/438612/肺炎-深度-無薪假-八折糧殺到-抗疫基金救不了的兩大死症


上記の様に、平時と同じ労働問題への平時の手段での対処法しか法律上ない上に、平時より権益は全体として限定されている。政治的な緊急の対応が全く出遅れているというより、労働問題において全く存在していない。雇用維持の為という建前で香港でも行われる停職が整理解雇、実質的な解雇の手段になっている可能性がある。停職として行う退職勧奨、解雇の手口、普通解雇として行う整理解雇など悪質な手口は、本来の直接的な処置ではなく、他の処置の形、旨味をとって行う汚いやり方が実際である。


香港の人事部は、労働者の最大限の法定権益を喪失させ、資本家側の対価を最小限あるいは、ゼロにすることにこれらの悪質なブラック人事の主旨がおかれている。さらに悪いのは、これらに止まらず労働者側にいたずらに損失を被らせる処置をとろうとする事である。これは、とっくに事業内容の範疇も超えた社会的な暴力と言える。


これらすべてを最大限阻止するには、労働者側が断固として法的根拠を持って法定権益を資本家側に要求する事である。それにより摘発された全く同じ手口は使えなくなる。しかし、これも永続ではなく、日本にヤクザの世界でも見られる3年ルールがある様に、3年経つとまた過去に摘発された事柄を赦されたかの様に再開する傾向も無視できない。日本では殊に、約3年で元の違法行為を再開するブラック企業が見受けられるが、香港でもこの類の懸念は万国共通と言える。担当官の異動を計算にも入れている姑息な時間単位である。これ自体がまともな企業の表徴ではない。


正確には学会で確認されている限り、2019年12月1日から武漢で始まり、12月31日になってやっと情報が公開された武漢コロナウィルスに関して、世界第四から六番目の感染地域となった香港(原稿執筆当時)でも日本同様、ホームオフィスの形態(雇用主の指示であり、賃金請求権があり、自宅出勤・作業、また単に公務員の様に有給休暇と同義になっていたりする)、時差出勤、営業時間短縮を採用したり、出勤停止としての無給休日(ホテル業界に見られる一ヶ月以上の自宅待機)を強いたり、同意を経ない一方的な契約内容の変更である減給、果ては整理解雇などの対応がなされている。

しかし、香港では労組は制度面でアプリオリに無力化されている中で、対応方法は平時の条例と判例に規定されているもの以外はないので対処方法は変わりはない団体交渉がないので、署名運動、抗議宣伝、ストライキしか労組には交渉手段がない。しかも、個別の労働者の手段は、資本家側の労務処理が明確な条例違反で相応の行政処置が規定されていて、苦情が有効なもの以外でも、結局は民事的な訴訟手段しかない。いわゆる雇用主による職場の衛生安全管理義務(安全配慮義務)は、具体的な個々の事件と組み合わさると民事裁判では有効でも、それ自体としては行政が即時行動に移る事を期待できるものではない。努力義務規定は、法的拘束力がなく、それ自体は抽象的で、具体性に欠如し相応する罰則規定もない方針、指針の類である。

日本の場合(民法):

会社は労働者に対して「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務を負っている(労働契約法5条)。

そのため、会社による出勤命令はこの安全配慮義務に基づく一定の制約を受けると考えられ、無制限に認められるものではない。


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https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20200220-00163805/


香港の場合:


工作場所中的新型冠狀病毒有關的雇主法律責任的主要領域包括:

在合理可行的範圍內確保員工的工作場所健康和安全(即《職業安全與健康條例》(“OSHO”)規定的義務和普通法的謹慎義務)

遵守僱傭合同和《僱傭條例》(“ EO”)規定的義務(例如,繼續支付工資,確保僱員在僱傭合同的範圍內工作) 

遵守《殘疾人歧視條例

遵守《僱員補償條例》(例如,擁有適當的保險並及時報告疾病/死亡)。

除了法律要求雇主根據《經濟合作法》(ECO)購買適當的保險之外,它還可能考慮商業中斷保險,醫療保險和疏散保險


雇主也可能希望審查其現有的保險單,包括醫療保險,疏散保險和業務中斷。


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https://www.mrchr.com/post/hongkong-novel-coronavirus-and-employer-obligations/#gu_zhu_de_zhu_yao_fa_lu_yi_wu_shi_shen_me


職業安全と健康条例での規定はそれ自体民事的な努力規定であるし、ザル法であるとして罰則強化などの大幅な修正案が昨年提出されている。雇用条例、障害・疾患者差別条例、被雇用者補償条例、経済合作法などは、人事部的に注意しなければらない雇用主の努力規定の面を強調しているが、労働者保護という観点で論考されていない極めて消極的、機械的、形式的な雇用主の最低限するべき手続きを端的に示しているだけである。


条例上努力義務規定はあれどもそれに照応する罰則規定なし


ご覧の様にこの努力規定には、条例の文面で巧妙に照応する罰則規定がない点が重要な落とし穴である。これは、香港的なザル法の特徴であり、違反しても照応する罰則規定がなければ、その行為は合法なのである。


従って、雇用主の衛生管理に関する努力義務規定の有無を指摘して何かあったら労組やNGO、NPOへ相談をというのは浅薄すぎる。基本的には、疫病蔓延においても香港の場合は政府が緊急法を発動して政令で具体的な、制度的な面での労働者の救済処置を出さない限りは、平時の労働法上の対処法と同じやり方を強いられるのである。この点に、コロナウイルスに感染したらどう対応するのかという専門家たちのアドバイスが空虚な原因がある。

ホームオフィスや、無給休暇というのは香港ではそのまま減給、部門縮小や閉鎖、推定解雇のケースに片足を突っ込んでいる状態で、ホームオフィスでそれを有給休暇として楽観できるのは管理職のオフィス労働者か公務員だけである。


公務員には、また無給休暇という私営企業の手法が採用されていないからだ。上記の手法は、条例で規定されているのではなく、もっぱら雇用主の裁量によるものである。しかも、無給休暇の延長は、長ければ長いほどそのまま自動的に、客観的には解雇条件形成になる。言い換えると、賃金支払い日より7日以内に支払いなければ、賃金未払いの違法行為であり、さらに1ヶ月未払いで推定解雇として該当し、解雇に関する法的な補償を受ける権利が発生する。極めて危険で、不安定な状態へ労働者を置く手法であり、コロナウィルスよりも致死性が高いと言える。


香港の労働問題も、労働者側の勝利は法的には制度的に規定されている労働者の法定権益を要求してそれを額面通り獲得するという純機械的な、加減法的な限定的なものであり、職場の改善や雇用関係の維持をそれ自体直ちに意味していない。これは、行政法的な範囲での解決の場合である。


一言で概括すると、香港では、法的な対処法は平時と基本同じになるというのが回答である。

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