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Writer's pictureRyota Nakanishi

香港労働法 Hong Kong Labor Issues #48 日本人のための香港労働問題研究:工賊不兩立!中国返還後の労働法改正と更新

Updated: May 2


    香港労働法 Hong Kong Labor Issues #48 日本人のための香港労働問題研究:工賊不兩立!中国返還後の労働法改正と更新
FILE PHOTO: Villain © WiX

Summary: During the post 1997 era, Hong Kong had only a few and trivial ''quantitative'' labor law amendments in compensation. It basically preserved the British colonial labor system. There are still no eight-hour day system, collective bargaining, public pension plan for all citizens and public health insurance etc.. It's worse than any other labor environment under crony capitalism. The labor practice of 23 years proved that workers and labour aristocrats can't coexist.


概要:回歸後,香港幾乎都沒有重大勞動法的改革,只有些次要的款額,日數等純數量上的調整而已。一成不變。譬如,八小時工作制,集體談判權,退休年金制度,全民健康保險等,重要的基本勞工制度都仍然未成立。香港勞工政策及勞動政黨絕非漸進主義的改革主義,而是極右反改革主義。實踐證明了工人階級與工人貴族決不兩立


最新の香港の労働情勢: 中国返還後の労働法改正


はじめに


中国返還後の労働法改正とは、それ自体重要な論文の主題である。本論考では、1997年の中国返還から香港の労働法体系の、2020年現在までに至る法改正(制度自体の改変或いは制度内の更新)に関して概括し、判例法理に関しては同様の期間に関して、後日別途整理していきたい。日本人としての利点を享受しつつ、日本人という少数民族である点に起因する一切の社会的負担を背負う必要がない駐在員や、二重国籍のハーフではなく、香港在住または移住予定で現地採用の日本人労働者の方達が対象なので、あくまで日本語で執筆する。中国語や英語では参考資料やサポート体制はある程度香港で確立しているので、それらによる執筆は不要と見做す。


ついでに、簡単に概括すると現地採用の日本人労働者達が面する香港の障壁や差別は、日本のプロの留学コンサルタント達が知らないものまで包括すると、(1)ビザの種類及び永久居住者か否か;(2)国籍及び日本人という歴史的立場;(3)言語能力、北京語ではなく殊に広東語と英語;(4)香港の8大学卒業か否か(巧妙に隠蔽されているフィルター)或いは、香港で実施している試験資格の有無;(5)年齢や性別;(6)求人が日本人・外国人案件か香港人案件か;(7)縁故関係の有無というフィルター、仕分けなどがある。香港の産業構造自体が極度に偏重し奇形である上に、これらに自動的に該当しない労働者達を排斥する、人事部の特殊な障壁=フィルターによって、日本人労働者達にはそもそも初めから、自由で平等で公正な競争の労働市場なるものがアプリオリに存在していないと断言できる。2015年以降、香港在住日本人数が殊に劇的に減少していく傾向は必然的である。もはやこれは逆戻りする事は当面なく、未来のスカイカー (skycar)による新しい産業革命が契機となる反転の可能性は低い。なぜなら他の社会グループが抜けた穴を埋める形になるからだ。


日本では、菅政権下での竹中平蔵の新自由主義的なベーシックインカムや性別欄の無い履歴書などが話題になっているが、まず前者に関してはそもそもベーシックサービス自体が整備されていない香港では遠い未来の話であり、世界的にはロシアがプーチンの社会民主主義政権下で反ネオリベの本意に沿った理想的なベーシックインカムを実現させる可能性が高い、後者に関しては、香港では各募集企業が面接時に独自のフォーマットを用意して応募者に記入させるという慣行なので、香港では意味がないし、記入欄の問題はプライバシー条例や性別差別条例の範疇で考察され、問題意識として存在していない。香港では履歴書フォーマットが自由な応募者側ではなく、企業側が用意している記入フォーマット自体の問題になる。



コロナウィルス


安倍晋三政権の継続に過ぎない傀儡の菅義偉政権下で、日本が未だに第2波に呑まれている中、香港のコロナウィルスの第3波は、2020年6月15日の3件から、2020年9月25日の3件でほぼ収束の段階にある。2020年9月25日時点で、人口750万9200人の内合計5,059人が感染し、104人が死亡した。死亡率は、2.1%である。死亡率は、感染者からのみ計算するから、例えば、悪名高い集団免疫論によると人口の6割(イギリスは7割)が感染すれば集団免疫を獲得できるとするが、いわゆる専門家なる御用コメンテーターらの詭弁は死亡率2%として香港の人口の内約94,615名がそのために死んでもいいという無情極まる論理になる。幸いな事に、この新自由主義の悪魔のシナリオは香港では実現する傾向にはない。


しかし、2020年9月24日には欧州での第二波が本格化し、当面香港でも主としてコロナ輸入元であるイギリスや欧州大陸の内、そのフランス経由での輸入ケースが増加する勢いである。それが、全中国で最も防疫に失敗しているネオリベ香港という最弱の環で再び第四波を準備する事になる。しかし、統計上日本はコロナの第一波と第二波間にほとんど間隙がない長い波動であるのに対して香港の場合は、明白な断続性、間隙の一定期間はあるのが顕著。問題は、香港政府は9月24日にイギリスの渡航危険度のランク上げを行なったが、2週間以内にイギリス渡航した者は出発72時間前のPCR検査の陰性結果と、香港での14日以上のホテルの予約証明を提出しなければならないが、この規制も10月1日になってやっと実施になる。その間に、駆け込み入国になるのは自明の理で、先の大陸との境界封鎖時の教訓が皆無である。これが、感染拡大へと例によって勢いづけるのが目に見えている。なぜいつも際限なく、即時緊急措置を発動ではなく、世論を無視して長過ぎる駆け込み期間を設けるのか?官僚独裁の香港ならではのミスマネージメントの好例である。この悪習を正す勢力がない。(香港は、正確には与野党がなく、つまり政党が政府を構成するのではなく、あくまで官僚専制である)


最低賃金


香港の労働法制の中でも極めて重要なのが最低賃金制度である。中には、愚昧なアドミンもいて、最低賃金は時給にのみ関係して、月給サラリーマンには関係がないと勘違いしているが、毎日毎時の平均賃金を法定権益の要求で計算する際にも、また賃金が最低賃金を下回っていないかチェックする際にも重要で、賃金の法律、経済学的概念自体を誤解している輩の錯誤である。最低賃金制度は、その最低賃金の2年ごとの調整額がいわゆる法的改正という形態ではなく、あくまで制度内の機制の作用としての更新、機能の一部、制度の運用の結果として認識されている。


最低賃金委員会が、来年から向こう2年の最低賃金を現行の37.5HKDで凍結する以降である事が9月25日に発覚した。これは、時給の非正規労働者だけではなく、日本と共通して言えるが、全ての労働者の賃金の最低時給賃金額の水準を規定する大切な無関係ではない事象である。いわゆるホワイトやブルーカラーは企業側の勝手な労働者階級の分化の為の固定観念で、法律上全て労働者であるという共通点を忘却してはならない。また、同委員会は労働者階級ではなく、多数派の支配階級の成員達による資本家本位の構成になっている。労働貴族は一人いるが、他は弁護士や官僚で、最低限、時給の非正規労働者たちが代表として一人もいない。


過去2年から継続している4.8%のインフレーション下で、賃金の凍結はそのまま社会的なマクロな規模での減給効果を意味している。つまり、実際は現行の最低賃金を下回るのである。本来、労働者側はインフレ率を考慮した最低限の増額提示を譲歩妥協としての最低ラインとしていた。つまり、39.3HKDから40HKDが次回の増額目標であった事が判明している。


これは、理論ではなく、労使間の政治的な力関係によって決着をつける以外にない問題である。最低賃金増額には、インフレ率という客観的な数値が常に基礎、根拠としてあるが、資本家側は企業倒産や、上層部の労働者の減額や不満を招くという崩壊論の脅しの一点張りである。それに対して、最低賃金を受け取る労働者数が18万人から減少し、今では50から60HKDを受け取る労働者が多いというのは反論にはなっていない力不足の感がある。しかも、この時点で早くも議論に決着がほぼついている。これでは、駄目だ。最後にものを言うのは労働運動の有無である。これが決定的に欠如しているし、これも企業倒産や商業へ悪影響するという同様の使い古された文句、理由でなんとこの香港最大の労働者組織工聯會自体にも忌避されている。自縄自縛とは正にこの事である。忘れてはならないのは、労働者階級の不満はそうした無能な政府及び労働貴族の組織へも向けられるという事である。


民意調査


香港最大の労働団体、政党(香港には政党法がなく、正確には政党でもない利益団体)でもある工聯会(社団法人であり、労働組合でも、労働組合連合でもない)が、9月12日から16日にかけて、1490名の市民に、労働者達の現状の就業状況と求職自信指数(Worker Confidence Index)の第六回アンケート調査結果を9月17日に発表した。74%が過去1ヶ月以内に仕事、収入に影響が出ており、40%が業務停止・停職や無給休暇状態、12%が減給か他の低賃金の職への転職、10%が整理解雇、さらに78%が収入減少し、30%が無収入、50%が失業し、向こう3ヶ月以内に418の連続性を満たすフルタイム職を見つけられる見込みがないという。三度に渡る防疫抗疫基金も、保就業プランの手当も本質的には資本家階級への企業支援であり、労働者階級に全く謳われた効果が波及していない事は自明の理である。労働者支援であれば、労働者への直接給付でない道理はない。


約8割の労働者達に、コロナ対策基金の支給自体と謳われる効果が行き届いていない実際の惨状が端的に窺える。しかも、一時的、短期的な失業ではなく、当てもない長期的な慢性の失業状態が広がっている。これは、反逃亡犯条例改訂案に伴うカラー革命の暴動の土壌となっている超格差の水準から、コロナ蔓延下での更に深刻化した香港全体の貧富の格差の拡大を示している。救貧目的に設立された政府の扶貧委員會など完全に形骸化しており、7割が政府の対応に不満だと言う。


しかし、対案は、これまた短期的な視野での失業手当、求職手当、短期非正規職の産出、香港の生活保護制度に当たる総合社会保障援助プラン(綜合社會保障援助計劃)の申請基準を下げて、個人申請可能にするなどのスローガンの連呼の域を出ない。これに、失業者支援の再就職支援の在職訓練手当を加えるのも表皮的で、これまで労働貴族達が体制と既得権の資本家階級に媚を売って、香港で未だ致命的に欠落しているベーシックサービスの整備の為の肝心な労働運動を、内側から制圧して来たツケが一気に来ている。この反動が、これらの表皮的で、近視眼的で、場渡的な、大幅な制度変更を伴わず、既得権益に当たり障りのないヒステリックな断続的な要求の連呼に顕著である。しかも、彼らは記者会見とスローガンの連呼以外に肝心の労働運動に打って出る事をしない。彼らは何をしたのか?声の代弁というのは代行主義であり、しかも労働運動、労働者による問題の解決の代行ではない。彼らが代行したいのは利権だけである。これが決定的である。


労働運動とは、各労働者個人の自覚的な権利行使の総体と各労働組合の団体行動の社会的な総体である。労働貴族による記者会見やPRスタントは労働運動自体ではない。厳密には彼らは、労働者でも労働組合でもないからだ。最終的に労働政策の行方を左右するのは、労働運動の有無と勝敗であり、偉大なる理論自体ではない。論争で、最後に物を言うのは必ず実践、行動である。


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失業率と失業総数と余剰労働力比率


最新の失業率と就業不足率などの余剰労働力を示す数値が9月17日に政府統計処から発表された。幾つかの統計上のトリックがある。まず、6月から8月の失業率が5月から7月水準を維持と失業総人口の増加が矛盾している。失業人口の増加自体が、失業率の実際の増加を示している。2003年SARS以来の、中国返還後最悪の経済危機が香港の労働者階級に訪れているが、これは2019年の反逃亡犯条例改訂のカラー革命の経済的な影響の継続も包括しているので、コロナだけではない。


最新の失業率は6.1%、統計期間の失業総人口は24.83万人で、5800人増である。就業不足率は、3.8%であり、0.3%増加。就業不足人口は14.92万人で、1.32万人増加である。この余剰労働力の比率には、ゼロ収入の実質完全失業も含まれるし、失業率を補完する概念であり、どちらも増加である事は、失業率が不変という数値が矛盾している事を示す。失業率と就業不足率は連動している。失業人口とその他の余剰労働力が増加して、余剰労働率が増加したのに、失業率だけが不変な訳がない。


失業が深刻なのは、もちろんサービス業で小売、宿泊、飲食業(最悪の影響を被っている)、建設不動産業である。就業不足としての余剰労働力では、殊に運輸、保険と教育である。


総就業人口が、364.04万人で3400人増加、総労働者人口が388.88万人で9300人増加が失業率を維持する効果になったというつもりである。まず、失業も余剰労働力を構成する前提の上で言うと、総就業人口は、失業を除くが潜在的失業と部分的にその他の余剰労働力を含み、総労働者人口はあらゆる余剰労働力と失業をも含んでいるから、これらの増加が抽象としてそのまま積極的な意味を有しているわけではない。就業人口と労働人口は別概念であるが、余剰労働力はどちらにもカウントされている。余剰労働力の増大は、失業の増大と同じくそれだけ十分な仕事にありつけない労働者、半ば失業状態の者がいる事を意味し、全体としては賃金水準を引き下げるので常時予備軍として人口的に創出され、常にプールされている。しかも、プチブル層が倒産して労働者へと変化した分も入るし、フリーランス契約の労働者、請負委託労働者の増加も入る。不安定雇用の増加をも肯定的に捉えている点に香港政府側の無神経さと非人道性がある。


そこで、労工処による対策は「中高齡就業計劃」、「展翅青見計劃」及「就業展才能計劃」などの高齢者や、青少年、そして障害者への在職中の職業訓練の手当及び継続雇用手当を雇用主に給付するという形で、あくまで雇用主への支援を補完する動作を偽善的に労働者の雇用維持の為という偽装で行っている。実際、論理的にはこれを雇用主保護の為と称して行うとしても振込先は雇用主の指定銀行口座で、労働者達は申請の事実を確認するのは困難で、そもそも何も知らされていないままに進行し、そのまま企業側で自由裁量で賃金や物品などの可変資本や果ては不変資本へ充当する事に変わりはない。行為において、それをなんと謳おうとも、なんと包装しようとも、実際は物理的には同じ過程を指すだけである。ここでも労働者への直接給付が労働者支援である事を忘れてはならない。制度的に労働者への受給を確保できないのは欠陥であり、その為の過程自体が既に誤り不適切なのである。香港の社会福祉制度が基本的に家庭単位で、個人単位の申請が主流でないのにも留意がいる。


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生活保護 (失業領取綜援)


社會福利署が、9月17日に発表した所に依ると、香港の生活保護制度と言うべき総合社会保障援助プラン(綜合社會保障援助計劃)を失業で受給するケースが、8月時点で1.87万件あり、前年比で57.3%増になった。約32万人が生活保護対象になったが、これは失業人口を包括していると言える。さらに、申請件数だけでも前年比で65.6%増になった。細部では、低所得、障害、健康などのカテゴリーで申請増加が見られ、老齢や単身父母のカテゴリーが減少になっている。つまり、自然な要因ではなく、去年からの暴動と今年のコロナ禍という、香港のツインデミックによる人為的な大規模の破壊的要因が主要である。さらに背景としては、香港政府が今年の6月から来年の5月31日まで実施する健常者による総合社会保障援助プラン(綜合社會保障援助計劃)申請の資産限度額を1年緩和した影響もある。


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Smart City Index


スイスのIMD World Competitiveness Centreが、今年の4月から5月に百以上の都市で1.3万人に行った調査結果である最新のSmart City Indexを9月17日に発表したが、そこでは香港が世界109の都市中で32位。さらに、香港の現状における主要な早急に解決するべき社会問題を79%が不動産価格高騰、44%が保険サービス、公民の参与度、汚職腐敗、交通渋滞などが各39%となった。この保険サービスとは、公的保険サービスの拡充というベーシックサービスの整備に関わる喫緊の課題の一つである。最大最悪の社会問題である不動産価格高騰に関しては、全国最大の独占資本による競争の死滅と価格の高止まりの問題なので、香港人が理財と称して、不労所得を株や不動産の投機で貪欲に貪るナルシスト的な一攫千金の個人主義を改め、真剣にこの問題を解決する方向へ運動を構成しなければならない。独占資本だけでなく、この社会的層が真の改革を妨害している。そこで独占資本の解体と不動産価格の公正な適正価値水準に上から調整し直す経済政策が必須である。これが、アフリカの貧困国と同水準で際限なく拡大する格差と、政治的に誘発される暴動の社会的土壌である。この調査結果は、香港人の社会的な不満を概括して、その解決の優先順序の意識がかなり明確に形成され、社会的に認識が共有されていることも示している。しかも、カラー革命では、若い資本家階級は成り上がりのためにさらなるブルジョア民主主義を要求するが、彼らに喫緊の課題として存在しないこの問題の解決など、訴求のスローガンにもなっていない点も無視できない。


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破産件数


破產管理署が、9月18日に公表した個人破産件数は、この8ヶ月で約5940件の破産申請(申請するのは債権者側)があり、前年比で13%増となった。裁判所による破産処理の強制執行申請(強制執行でないと未払い賃金処理が後回しになる)の案件数は、4.96%増の275件である。これは、一般の想像とも大方一致する現実の有様である。


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保就業手当(保就業計劃)の実態


まずは、再び失業率と就業不足率、つまりこの二つの余剰労働力の指標に関して、この保就業手当を見ると、その給付下での無給休暇の手段が正に大量に就業不足人口を生み出している。職工盟主席吳敏兒の証言によると、80%の労働者が保就業手当を雇用主が受給する中で、無給休暇を強いられており、20%がその下でリストラされている。4分の1の雇用主が申請に違反し、違反しても手当をそのまま返金すればよく、何も罰則らしい罰則にならない。そして彼らはまた申請するだけである。しかも、そもそも手当が不要な雇用主も申請する始末である。保就業手当は、政府が雇用主にそれを払ってリストラさせているようなものである。


この際限のない無給休暇は、失業にはカウントされないが、明白に変形した解雇であり、実質的な失業である。ここにおいて、二つの指標が一つに重なる。どちらも余剰労働力の社会的な比率を示している。


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不当な利益供与としての縁故採用


8月21日に中国政府の要求と資金分担でようやく香港でも実施された全市民PCR検査全民檢測計劃)が5.3億HKDの香港側負担と178万人の参加、32件の感染確認と1件の誤認をもって、9月14日には終了した。強制ではない上に、反対運動が活発化したので十分な結果を出していないが、PCR検査を無料で受け、自ら感染の有無を自主的に判断できる機会を与えた点は民主的であり、肯定できる。しかし、32件と言うのは当時の2、3日分の感染件数で、何も全市民PCR検査をしなくても、32件と言う数は傾向的に当時検出されたと思われる。


問題は、そこではなく、この背景で何が行われたかである。公務員事務局が8月21日にこの実施のために人員を内部労働市場から募集した際、建前の141箇所の検査所で当直に当たらせる為に、75ある政策局と部門の現職或いは退職した公務員から4千名を募り、時給200から900HKDで雇うとしたが、実際は3部門の寡占状態(民政事務總署;康樂及文化事務署;選舉事務處で、しかも中には応募資格に適合しない者までも採用され、採用基準も曖昧模糊としている事が公務員側から指摘、批判が起こった。香港では、社会的な面子から縁故採用は行われていないと言うが、とんでもない縁故採用こそこの様に主流である。あとはそれを取り繕う言い訳でしかない。縁故採用とは利益供与である。公正自由平等とは正反対の一種の腐敗行為である。公務員が社会的に率先してそれを行っている。縁故採用は、私的取引であり、平等で、公明正大で、公正な競争ではないので、能力・実力主義とは言わないただの卑劣な腐敗行為である。それによって社会が喪失するもののほうが大きい。


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香港の労働団体の労働貴族とその政府入りという立身出世 (工聯會的工賊如此出賣工人)


香港の労働者階級は、思想的にはネオリベと社民の曖昧な混乱と妥協の間を浮遊しており、全体としては無抵抗の態度においてネオリベ肯定派である。社団法人として登録している4つの労働政党下に労働組合や労働組合連合が属する形が主流である。問題は、その労働政党に属する世襲、縁故採用職員(基本的に傘下の労働組合の幹部の子息などが優先)が、やがては労働政党内の職員から、後援企業の資本家と会員労働組合の組織的援助で、区選挙、立法委員選挙両方で立候補し、それらフルタイムの職を少なくとも同時に3つから4つは掛け持ち、助手達を雇って分散的に行っている。果ては政府入りするというのが代行主義の労働貴族達の見上げたビジネスモデルである。常識的には、区委員と立法委員はフルタイムで別の人間が別個に集中してこなすべき独立した職である。日本では考えられない形態での公的権力の寡占が平気で横行しているのが香港である。


2020年5月30日、労働政党工聯会から勞工及福利局副局長に就任した何啟明は典型的な労働貴族の事例である。それが破壊する労働者階級からの信頼は計り知れないぐらい甚大である。常にそうである様に、労働貴族の代行主義の果ては、終局的にはそれまで利用してきた労働者階級への裏切りである。彼らは、それまで反対してきた相手側陣営へと、時季を見て私的に転化して、公衆の面前でそれまでの卓袱台を見事にひっくり返すのである。


2020年9月25日の東方日報の報道では、勞工及福利局副局長に就任した何啟明は、これまでの労働側の主張をひっくり返して、失業金制度設置に反対というネオリベ香港政府の立場を表明した。これは、それまで支持してきた香港の労働者階級への労働貴族による裏切りである。これが、工聯会の労働貴族の問題であり、香港の労働者階級はこの様な労働者に敵対的で日和見的な集団は唾棄するべきである。それは、団体交渉権確立で全ての労働組合を独立させ、既存の労働貴族の立身出世の道具に過ぎない労働政党を解体する必要性を示している。そもそも労働貴族が8時間労働制や団体交渉権を阻み、労働運動を窒息させ、MPFの様な金融機関の社会保障制度を、労働者の退職金制度という偽装で支持しているのである。


工賊不兩立!以集體談判權消滅勞動貴族!


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中国返還以降の労働法改正


23年間で驚愕するほど、労働法制はほぼさしたる改変がないが、労働運動・争議から展開した判例法理による労働者権益の獲得の方が大きい。


1997年7月1日中国返還以降の香港の労働法制は、2020年までの23年間で労災補償の額や最低賃金額や配偶者の育児休暇の増加などはあれ、既存の植民地時代の労働法制の枠組みの大枠は全くの手付かずで、支給額、支給日数などの純粋に数量的な限定的な調整以外は重要な制度的変革がない。ほとんど何も変わらないままで来ている。


これは、漸進主義の改良主義ですらない。植民地時代の労働法制の骨組みを可能な限り不変にし、中国返還後も香港の労働者階級の為に、制度的な抜本改革を大幅に実施するという情熱も政策的傾向も皆無である。極度に反動的で硬直した労働法制であり、現実に適合していない為に貧富の格差が増大し、労働問題に歯止めがかからない。ここにも香港の文字通りの旧態然とした植民地官僚の頑迷な態度、硬直し変化を拒む極右的作風、異常なまでに資本家階級に偏重した反動思想が顕在化している。格差の度合いは、官僚の偏向度をそのまま反映している。労働運動は、これを正さなければならない。言い換えると、植民地時代の労働法制は基本そのまま変更しないという政策メッセージである。反歴史主義と言わざるを得ない。正にここに反中反共のイデオロギーが体現され、噴き出ている。官僚独裁専制は、香港においては中国本土とは正反対の本質に転化する。


そこで、進歩的な改変を判例法理としてこの体制へもたらしたのは個別の勇敢な法廷闘争で法戦を戦った労働者達である。既存の条例面ではほとんど何も重要な改変がないままであるのに対して、内容が豊富なのが判例法理である。ネオリベ官僚ではなく、また労働貴族達でもなく、労働者達の法廷闘争こそが、これまで少しでも労働者の権益を社会的に獲得してきたのである。労働問題に関する判例法理は必須の知識であり、別途それ自体として整理したい。ここでは、簡潔に中国返還後の香港の労働法制の全改正・変更を概括する。


1、労働災害関連 


a. 支給額変更


2019年 

《僱員補償條例》(被雇用者補償条例):9つの補償項目で補償金額が増額され、2019年4月26日以降のケースに適用。

《肺塵埃沉着病及間皮瘤(補償)條例》(肺塵症及び中皮腫補償条例):5つの補償項目で補償金額が増額され、2種類の医療装置が支給対象に認定された。2019年4月26日以降のケースに適用。

《職業性失聰(補償)條例》(職業性聴覚障害補償条例):4つの補償項目で補償金額が増額され、2019年4月26日以降のケースに適用。 (1)


以上は、2017年2015年にも同様の2年ごとの給付額の変更が行われている。


b. 請求可能な毎日の医療費の限度額変更


2018

《僱員補償條例》(被雇用者補償条例)と《肺塵埃沉着病及間皮瘤(補償)條例》(肺塵症及び中皮腫補償条例)に関して、労働災害認定のケースで、規定の入院や診察治療の際、毎日の請求可能な医療費限度額は、300HKDに増額、同日に入院や診察治療を受ける際、毎日の請求可能な医療費限度額は、370HKDに増額。(2)


2003

《職業性失聰(補償)條例》(職業性聴覚障害補償条例):6つの大きな変更があり、最低と最高の補償額が、額面の賃金上昇率に応じて調整に;永久に労働能力を喪失する場合の補償額計算の百分率を引き上げ;職業性聴覚障害(聾)が認定された者は、職業性失聰補償管理局(管理局)に補聴器の購入から、修理交換までの費用を請求可;新たに4種類の高雑音にさらされる職業を認定;職業性失聰補償管理局(管理局)による健康回復プランの進行と資金援助を許可;補償金額を確定する為に申請者の過去12ヶ月における雇用主同意の無給休暇を除外し、平均収入を計算。(3)


c. 労災補償時の雇用主援助


2003

僱員補償援助條例(被雇用者補償援助条例):僱員補償援助基金管理局が、支払い能力を喪失した雇用主に対して、労災被害の労働者への労災補償を援助する事を規定し、裁判所に労災補償義務が認定される限り、それを継続的に可能にした。(4)


2、休暇取得関連


a. 育児休業・休暇の増加


2019年 

2018年僱傭(修訂)(第3號)條例》(雇用条例):男性配偶者の育児休業・休暇が2019年1月18日以降出生のケースに関して5日になった。(5)


以上は、2015年にも同様の改正がなされている。これは、法定の最低基準を規定したに過ぎない。


b. 新たな法定休日及び公休日


2015

僱傭條例》(雇用条例):2015年9月3日をメイドや外国人労働者をも包括した全労働者対象の抗日戦争戦勝記念日の法定休日・公休日とした。しかし、この日までに3ヶ月以上勤務していない場合は、休日手当てはない。(6)


c. 法定の代替休日の指定


2012

2011年公眾假期及僱傭法例(補假安排)(修訂)條例》(雇用条例及び公休条例に関する代替休日振り分けに関する修正):香港には、一般労働者の休日を規定した雇用条例と銀行や公務員の休日を規定した特権的な公休条例とがあり、今統一が謳われているが、ここでは2012年2月24日以降に、旧正月最初の三ヶ日の内のどれかの日か、中秋節の翌日に日曜日が来る場合に法定休日や公休日として代替できる日を指定した。(7)


3、不当・違法解雇判定時の復職命令


2018年

《2018年僱傭(修訂)(第2號)條例》(雇用条例):2018年10月19日以降に、労働者が不当、つまり不合理で、非合法な解雇に遭った場合、勞資審裁處がそれらを認定したら、雇用主の同意なしに、復職命令や継続雇用(留用)命令を出させる。そして、雇用主がその命令を履行しなければ、労働者へ平均月収の3倍か、72,500HKD以下の額外補償をしなければならない。この上限額は二者択一ではなく、常に平均月収の3倍に対しての上限としても機能している。基本的に、復職や継続雇用ではなく、この段階に到れば補償を引き出すことが目的になるので、あまり違いはない。(8)


4、倒産未払い賃金保障の範囲拡大


2012

2012年破產欠薪保障(修訂)條例》(倒産による未払い賃金保障条例):2012年6月29日以降の大きく二つの範囲拡大変更は、まず雇用条例で解雇時の未消化の年休手当は、労働者が最後の年休支給対象の年度丸々累積し、かつ未消化の有給休暇の給与、そしてもし最後の年休支給対象の年度に勤務期間が3ヶ月、但し12ヶ月以下である場合は比例に基づいて有給休暇の額を計算する。もう一つは、雇用条例で規定された雇用終了の一日前までの4ヶ月以内で享受できる法定休日の給与。合計の限度額はどちらも10,500HKD。(9)


5、漢方医の地位の法的な認定


2006年

2006年為僱員權益作核證(中醫藥)(雜項修訂)條例》 對《僱傭條例》《強制性公積金計劃(一般)規例》《強制性公積金計劃(豁免)規例》的主要修訂:2006年12月1日以降、登録された漢方医の地位を雇用条例やMPF制度内でほぼ西洋医学の医師に近い役割を認め、漢方医による診断や証明書に一定の法的有効性を付与した。中国返還後の変革の本来の方向性にある改正である。しかし、西洋医学が法律面では依然最優先されている。(10)


6、未払い賃金への罰則強化


2006年

僱傭條例》(雇用条例):2006年3月30日以降、賃金未払いのケースに関しては、弁解の機会を与えた後、合理的な弁解ができない場合、裁判で有罪が認定されれば、罰金35万HKDと禁固刑3年となる。(11)


7、その他


2019年

僱傭條例》(雇用条例):2019年1月10日以降、勤務時間の記録を取らなければならない賃金上限額は、15,300HKDまでになった。(12)


2007年

僱傭條例》(雇用条例):2008年1月13日以降、賃金及び勤務記録の保管期間が離職後6ヶ月から12ヶ月に延長になった。(13)


2003年

職業安全及健康(顯示屏幕設備)規例」(ディスプレイに関する職業安全と健康規程)制定:これは、条例ではなく、あくまで指針、方針、安全ルールの類であり、裁判では参考にはなるが、法律ではない。これは、長時間ディスプレイ設置に従事する労働者の安全と健康を守る為のルールとして成立した。(14)


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以上、ご覧の様に現行の香港の労働者階級の状態を改善する重要な喫緊の制度的な変更がこの23年間で何もなされないままに硬直し、停滞した、現状に適合しない労働法制が官僚専制で歴史に対して強制されている。従って、労働者階級は必然的にこの官僚専制の硬直状態を打破する事は必須である。上からの改革か下からの労働運動でこの変革がもたらされなければこの泥沼は抜け出せないだろう。それを労働貴族達に望む事は到底できない。


追記:


産休に関する労働法制の最新の改正


2020年 


2020年僱傭(修訂)條例草案(雇用条例):法定の産休が、従来の10週間から、14週間へ延長になり、妊婦となった女性被雇用者は毎月最大で8万HKDの産休手当が得られる。これは、月収10万HKDの女性労働者が4週間以内に受領できる産休手当に等しい。計算は、従来通り、毎日の平均賃金額の5分の4で計算する。また、雇用主が支払い義務を負う、新たに増加した産休手当に関しては、全額を政府に払い戻しを請求できる。(15)


NOTES


1. Labour.gov.hk, 調高《僱員補償條例》、《肺塵埃沉着病及間皮瘤(補償)條例》

及《職業性失聰(補償)條例》的補償金額,以及擴大《肺塵埃沉着病及間皮瘤(補償)條例》的醫療裝置範圍, April 26, 2019.

2. Labour.gov.hk, 調工傷僱員及職業病患者可索還醫療費的最高每天限額, February 9, 2018.

3. Labour.gov.hk, 2003年職業性失聰(補償)(修訂)條例, December 19, 2017.

4. Labour.gov.hk, 《2003年僱員補償援助(雜項修訂)條例》, December 19, 2017.

5. Labour.gov.hk, 《2018年僱傭(修訂)(第3號)條例》法定侍產假, February 14, 2019.

6. Labour.gov.hk, 2015年9月3日為 法定假日及公眾假期, July, 2015.

7. Labour.gov.hk, 《2011年公眾假期及僱傭法例 (補假安排) (修訂) 條例》, December 19, 2017.

8. Labour.gov.hk, 《2018年僱傭(修訂)(第2號)條例》不合理及不合法解僱的復職或再次聘用命令, October 19, 2018.

9. Labour.gov.hk, 《2012年破產欠薪保障(修訂)條例》, December 19, 2017.

10. Labour.gov.hk, 簡介《2006年為僱員權益作核證(中醫藥)(雜項修訂)條例》 對《僱傭條例》的主要修訂, 2006.

11. Labour.gov.hk, 拖欠薪金的最高刑罰經已提高, December 19, 2017.

12. Hklii.hk, 第57章 《僱傭條例》 附表9 就備存工作時數紀錄指明的金額上限, January 10, 2019.

14. Labour.gov.hk, 《職業安全及健康(顯示屏幕設備)規例》, December 19, 2017.

15. Hk.on.cc, 12月11日實施法定產假14周 最多每月8萬港元補貼, October 9, 2020.



 

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