香港労働法 Hong Kong Labor Issues #49 日本人のための香港労働問題研究:判例法理の検索方法と知っておくべき判例

Updated: Jan 28


FILE PHOTO: Social Depression, Rioting And Plague  ©Public Domain; Composite ©Ryota Nakanishi
FILE PHOTO: Social Depression, Rioting And Plague ©Public Domain; Composite ©Ryota Nakanishi

Summary: In HK, ordinances are generally explained by bureaucrats without any reference to court cases. However court judgements are only correct and legitimate interpretations of ordinances in detail. Hence workers must know relevant court cases for actual labour issues they dealt with.


摘要:當香港官僚說明條例時,往往不會涉及該條例有關的判例法理。不過,條例的唯一具法律權威性的解釋是判例法理,而不是字面。因此,勞動者需要自行理解條例相關的判例,以利解決他們所面對的特定勞動問題。



最新の香港の労働情勢 (2003年SARS以降で最悪)


香港では、11月に入り、9月20日以来の11月12日の23件という微増の予兆傾向が示した様に、第4波が徐々に忍び寄る様なテンポで始まり、11月21日には正式に第4波が宣言された(香港では、数値を誤魔化すために感染確認数と暫定的確認数という体裁で分けて発表されるが、どちらも感染数であり、それらの合計が1日の感染数である。ちなみに11月23日は感染診断数73件と暫定的診断数70件で合計143件である)。さらに香港のコロナ感染ケースを強制処置でゼロにする事なく、第3波収束以降、毎日感染が継続しているのに、11月22日にはシンガポールとの旅行バブルと称する、香港版GOTO TRAVELキャンペーン(しかも14日間の感染防止の為の自主謹慎もない)が始まる予定だったが幸い目前で延期になった。これで、日本の様な第三波に呑まれている国との無謀なトラベルキャンペーンは遠のいた。旅行代理店、広告代理店の利潤のために、国民の健康を犠牲にする無責任極まる感染拡大策以外の何物でもないからだ。これに加えて、Return2hk(回港易が始まり、11月18日からネット予約すれば大陸やマカオから香港へ帰還する定員枠に関して、11月23日より毎日合計5千人の定員枠で、2週間の隔離なしで人員の大規模な入境が認められることになり、感染拡大と長期化が懸念される。人の移動量と感染拡大は比例する。


日本も同様にコロナ利権の為に矛盾した歪な行政対応になっている。コロナ感染が治らない中で、第二波の中で7月22日から始まった広告代理店電通、JTB主導の巨大利権事業GOTO TRAVELキャンペーンは結果として、二つの波の谷間にあたる9月24日の298件から以降徐々に第3波を形成し現在に至る。執筆現在までの日本の死者1981人は、日本では被害を否定されているSARS(わが国では、集団発生期間中に報告のあった可能性例16例と疑い例52例すべてが、他の診断がつき取り下げられたか、あるいはSARS対策専門委員会でSARSの可能性が否定されている)が労災認定されている上に、感染症法の全数報告対象(2類感染症)に指定されている事に対して、安倍政権によるCOVIDに対する同指定自体は妥当である事を物語る。問題なのは、コロナ自体がインフルエンザほど致死率が高いか低いかではなく、コロナ感染を完全に封じ込める前に、感染拡大にしかならない誤った利権がらみの政策を、推進している事である。これが、矛盾の主要な面である。また、国外の異なるタイプのより危険な或いは変異したコロナが輸入される危険性も無視できない。感染症利権、ワクチン利権、観光業利権は当然この政策上の矛盾を生んでいる。(1) 


コロナとの共存などあり得ず、コロナは大陸やマカオの様にゼロしか受け入れられないというのが正常である。その上で初めて、制約を解き、完全な国民生活保護処置と経済拡大策が安心して不可逆的に且つ有効に採用できるからだ。ゼロコロナこそが政策の最優先順位であり、真理である。


2003年のサーズのコロナウィルスは、SARS-COV1で雲南省のコウモリである中華菊頭蝠(Chinese rufous horseshoe bat)に由来する事が、2013年の仮説の段階から2017年には黄金の三角地帯に連接する雲南省のジャングルの洞穴で、科学的に確証されている。(2) 


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今回のコロナウィルスはSARS-COV2、その第二弾という点が見落とせない。しかし、今回に関してはイタリアで2019年9月に既にSARS-COV2の抗体の存在が確認されている事が最近(2020年11月11日発表)判明しているので、2019年12月1日の華南海鮮卸売市場と無関係の最初の武漢のケースの詳細が、未だ非公開でもあるが、中国由来説自体が今国際的に揺らいでいる。(3)


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前回にしても、どうしてコロナが雲南省の洞穴から都市へ大移動できたのかは科学的に判明していない。地理的な飛躍の謎は未だ解かれていない。


いずれにせよ労働者(ブルーカラー、ホワイトカラー、正規、非正規などの恣意的な資本の側の区分法やアイデンティティ政治がどうであれ、政治経済学上、法律上全て労働者階級である)にとって重要なのは、2003年のサーズのコロナウィルスは、当時巨額の政府予算を注ぎ込んだはずのワクチン開発プロジェクトが、いつの間にか雲散霧消となっていて、市民の記憶の風化した17年後の今も、ワクチンの未だに存在しないSARS-COV1が、労災認定されているのに、その第二弾であるSARS-COV2は、より甚大な被害を及ぼしているのにも関わらず、労災認定が香港政府に拒否されている点である。


またコロナ禍は、また20年以内に第三弾が発生する危険性があるが、労働者は今回の香港の企業側の対応や手口を理解し、忘れず、信頼できる確かな安定した業種、企業を選択する必要性がある。未来において今回の企業側の手口や行政側の対応方法はまた常習的に繰り返される危険性が極めて高いからである。


しかも、労働政党や労働組合との関係を見直す契機にもなっている。労働運動が窒息させられている香港で、労働者がこれらの社会的組織の杜撰な対応の板挟みになっているのが悲劇である。


2020年10月から11月の本論考執筆の間に発生した労働関連のニュースの中で特筆するべき事項が幾つかある。一つは、本年二度に渡る保就業プランと称する雇用助成金計画が雇用主対象の助成金として、6月から8月、9月から11月の支給期間に行われている。香港政府は合計2度で同計画をもう11月で終了する事を宣言している。従って、12月からリストラが本格化する気配を示している。


しかし、依然ここ16年間における最悪の労働環境の状態を示し、失業率(6.4%;7月から10月)と就業不足率(underemployment rate; 3.8%7月から10月; これは人手不足の意味ではなく準失業状態を指す失業率の補完概念)は高水準を維持、労働争議や不満が噴出している。8月から10月の失業者数は約25.7万人、7月から9月期よりも約2000人減少。就業不足者は、約14.8万人、7月から9月期よりも約1000人減少。香港政府はこれを改善としているが、中でも運輸業が他の業種よりも失業率が顕著に悪化し、次いで旅行業が打撃を受けている。(4)


まず、ここで統計に反映されていないのは、フリーランスの個人事業主及びフリーランス契約で雇用労働に従事させられている実質労働者の状態である。契約期間に関係なく、劣悪で違法でも形式上フリーランス契約が増えれば、労働者ではなくなるために、統計上の労働者数自体が減少する形で、失業率は表面上下がる。ここでは、コロナ下での解雇脅しによる契約のすり替えより劣悪なフリーランス契約への移行の存在が無視されている。


また、多くの労働者が死亡した場合でも失業率は下がる。元となる労働者・失業者数自体が共に統計上減るからだ。


そして、香港の失業率・失業人口に含まれる失業者の定義とは、


就 業 人 口 包 括 在 統 計 前 7 天 內 有 做 工 賺 取 薪 酬 或 利 潤 或 有 一 份 正 式 工 作 的 15 歲 及 以 上 人 士 。

失 業 人 口 包 括 所 有 符 合 下 列 條 件 的 15 歲 及 以 上 人 士 :

  1. 統 計 前 7 天 內 並 無 職 位 , 且 並 無 為 賺 取 薪 酬 或 利 潤 而 工 作 ; 及

  2. 統 計 前 7 天 內 隨 時 可 工 作 ; 及

  3. 統 計 前 30 天 內 有 找 尋 工 作

不 過 , 一 名 15 歲 或 以 上 的 人 士 , 如 果 他 / 她 符 合 上 述 (a) 和 (b) 的 條 件 , 但 由 於 相 信 沒 有 工 作 可 做 而 在 統 計 前 30 天 內 沒 有 找 尋 工 作 , 仍 會 被 界 定 為 失 業 , 即 所 謂 「 因 灰 心 而 不 求 職 的 人 士 」 。

除 上 述 情 況 外 , 下 列 人 士 亦 視 作 失 業 人 士 :

  1. 無 職 位 , 有 找 尋 工 作 , 但 由 於 暫 時 生 病 而 不 能 工 作 的 人 士 ; 及

  2. 無 職 位 , 且 隨 時 可 工 作 , 但 由 於 下 列 原 因 並 無 找 尋 工 作 的 人 士 :

  3. 已 為 於 稍 後 時 間 擔 當 的 新 工 作 或 開 展 的 業 務 作 出 安 排 ; 或

  4. 正 期 待 返 回 原 來 的 工 作 崗 位 。(5)

簡潔にいうと、求職活動の有無に関係なく15歳以上、統計前の7日以内無職である労働者の事である。


ここで、決定的に重要なのはこの失業者の概念に無給休暇を強いられている労働者達が含まれない事である。では、就業不足率の定義はどうか?


就 業 不 足 人 口 包 括 在 統 計 前 7 天 內 在 非 自 願 情 況 下 工 作 少 於 35 小 時 , 而 在 統 計 前 30 天 內 有 找 尋 更 多 工 作 , 或 即 使 沒 有 找 尋 更 多 工 作 , 但 在 統 計 前 7 天 內 可 擔 任 更 多 工 作 的 人 士 。 根 據 此 定 義 , 因 工 作 量 不 足 而 在 統 計 前 7 天 內 放 取 無 薪 假 期 的 就 業 人 士 , 若 在 該 7 天 期 間 的 工 作 少 於 35 小 時 ( 或 甚 至 完 全 沒 有 工 作 ) , 亦 會 界 定 為 就 業 不 足 人 士 。 就 業 不 足 率 是 指 就 業 不 足 人 士 在 勞 動 人 口 中 所 佔 的 比 例 。(6)


これも求職活動の有無に関係なく統計前の7日以内の労働時間が35時間以内かゼロである労働者が該当する。従って、この就業不足率に無給休暇を強いられている労働者達が該当するが、就業不足率自体が雇用関係を維持している体裁の実質失業者を包括する形で、それと分離された失業率を抑制する統計上の役割を官僚のために果たしている。また、この統計前7日以内は、それ以降の期間を包括していない。


保就業プランに話を戻すと、支給期間はリストラができないというが、支給期間に整理解雇してより劣悪な労働条件で新たに新規雇用を行い頭数を揃えたり、助成金を労働者へ渡すとしても支給期間に無給休暇(長引けばレイオフ、解雇相当という法的条件を満たす;4週間以内で通常の仕事日の半分以上が無給休暇;無給休暇とは減給手段であるという本質への認識が必要)を引き続き強いた上に、支給期間の3ヶ月が終了したらリストラするといった手口が散見される。


これに加えて、中国返還移行の行政機関のオペレーション面での緊縮政策で、資源不足を口実にする行政側は全苦情の内25%の処理を、目標に設定している(つまり75%は見逃すという事;香港の労働者は、行政面での苦情、調停、法廷での裁判、労組による団体行動の最低4つの抵抗手段がある)。


では、以上の諸問題を典型的に体現している現象であるキャセイパシフィック航空の大量リストラ及び再契約の事件を挙げてみたい。香港最強の行動する労働組合は日本同様に運輸業、ここではとりわけ航空業にある。國泰航空公司空中服務員工會(Cathay Pacific Airways Flight Attendants Union)は、民主派の労働社団法人である職工盟傘下の労働組合である。従って、彼らの今回の労働争議の状態・結果が香港全体の労働組合の、労働者の闘争の有様を最も象徴している。


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まず初めに、労働三権は香港では実質的に存在しない。団体交渉権なくして、団体行動権、団結権も反対物に転化するからである。労働三権は三位一体なのである。従って、4大労働社団法人(工聯会;職工盟;港九労工社団聯会;港九団聯合総会)の会員のトレードユニオンとして存在している労働組合は形式だけで、実質的には日本的な意味での労働組合としての権能を致命的に有していない。言い換えると、香港には実質的には労働政党として活動している労働クラブ(社団法人;政党法がない香港ではプロの政党ではなく、有限会社に過ぎない)はあっても、労働組合は存在しないと厳密に言える。


結論から言うと、キャセイパシフィック航空の大量リストラのケースは香港の労働組合がいかに無能で、御用組合でしかないかが分かる。最強の労組でさえ、今では完全な裏切り的な代行主義と資本への奉仕を行っている。しかも、労工処の官僚主義は労組、労工処と経営側の三者会談をあたかも団体交渉であるかの様な、誤解を与える虚構のPRイメージを醸し出したが、それは何も労工処側が思わせたがっている様な、特別な行政側の行動ではなく、いつもの労資関係科拘束力のない調停作業を勤務地の管轄区で執り行っただけで、個人単位での申請による同部門による調停作業と同一のものに他ならないと言うのがカラクリである。


労工処は、日本で言う労基署や労働局ではなく、行政の対応レベルの低さも加えて、機能的にはほぼハローワークのレベルに過ぎないのである。調停は、日本の労働局の調停と同質で法廷ではないので拘束力はない


ただし、日本の場合は労働局の調停は、公的な統計や労働政策の研究へ活かされるという肯定面がまだあるが。


であるからして、労働者は、行政側がどう処理するか、どこまで引き伸ばすか、どこで手を打ってくるかなど消極的な面を絶えず考慮する必要がある。基本は、条例の大きな法律上の穴をいい事に、アプリオリに違反や違法にならないが、他国では違法になるケース、倫理や労働者の権益に反するケースでも、条例や守則に文字通り書いてなければ、何も問題にはならないという点を予め念頭に置いているのが香港の行政側である。それが該当する場合は、如何に損害を与えても放任、放免するというのが3ヶ月から半年の引き延ばしの後の結末である。何も行政側に遠慮する必要ないのである。


そこで、労働者は日本以上に労働紛争に関しては自主的な行動を必ず主軸において、決して単一ではなく、日本国内では労組からタブー視されているものも含めた複合的な手段を講じるプランを立てるべきであるし、否定しようがない文字通りの明確な違法や違反を行政機関が際限のない引き延ばしや放免をした場合は、行政機関自体が問題(行政失當)になるので、苦情処理担当官事務所香港申訴專員公署; Office of Ombudsman, Hong Kong)に苦情申し立てができる。それも、同様の官僚主義に浸かる連中による3ヶ月から半年の処理になるが。


労働者は、組織は常に上を守り、資本家が資本主義の法律上アプリオリに優遇されている中で、問題の発生する前の時点でも既に社会的に圧倒的に不利な状態であり、従って最初から弱い立場である労働者側にとり、敗北とは問題に際して文字通り何もしない事を意味するだけである。最低限、他者の身に同様の問題が降りかかるのを防ぐ行動ぐらいは、被害者の社会的義務としてするべきである。そして例え、個人の手を離れても、抗議の社会的な蓄積が最後に物を言うのである。


労働問題と手口は社会的であり、組織的、常習的な経済犯罪である。従って、必ず同様の手口の被害に遭う他者が早晩存在する。そして、それに対する労働運動とは、同様な被害者、被圧迫者達が本来これを制度的に撲滅する事を目指す疎外された人間性の社会的な発露としての、自覚的な行動の社会的な総体である。


2020年11月4日に、香港政府も雇用主の一人であるが、イギリスのスワイヤー・グループが母体として有するキャセイパシフィック航空は、二つの労組香港航空機組人員協會(HKAOA)と國泰空中服務員工會、労工処の労使関係科による調停会議を開いた。


對於國泰航空要求現有的員工於明日午夜前簽新約,否則將會被解僱及不獲發津貼。議員尹兆堅批評國泰涉嫌違反勞工法例精神,及批評政府「龜縮」處理、置身事外。


尹兆堅指摘國泰不尊重勞工精神,單方面毀壞舊約。而政府早前向國泰注資,屬於僱主的一部分,理應責無旁貸,卻任由國泰「炒人炒得咁離譜」,對受影響的大量員工置之不理。


尹同時批評財政司司長陳茂波與勞工及福利局局長羅致光「消極、龜縮」地處理事件,指羅早前承諾將於簽約限期前安排勞、資、官三方會談,但現時據了解於限期前不會設任何會面,強烈譴責羅信口開河、開空頭支票。他促請政府盡快公布會談日期,而國泰方面應延長簽約限期至會談之後,跟從會談結果而制訂新約。 (7)


それ以前に劣悪な労働条件への変更を強いる、新契約期限前日の11月2日までに受け入れれば解雇せず、過渡的な移行手当を半額はまだ受領できるとしていた。労工処は、11月4日の期限日前までにキャセイパシフィック航空との調停を実現できなかった。


何よりも致命的な問題なのは、二つの労組香港航空機組人員協會(HKAOA)と國泰空中服務員工會の対応である。まず、団体行動を早々に放棄した事。これは、ドイツなどで、コロナの集会規制を掻い潜る、ソーシャル・ディスタンシング(社交的距離;社会距離拡大戦略)を守りつつデモを行う事例を無視している点が意図的である。団体行動権の放棄は、それ自体労組の必要性を葬る物である。


因管理不善而在全球最佳航空公司排名跌出三甲的國泰航空大裁員,並規限逾萬名幸存機組人員本周三(4日)簽署大幅減薪的加辣新合約,最終分別有約39名機師及673名機艙服務員因拒簽新約而被解僱或終止合約。國泰空中服務員工會主席王思敏今早(6日)在電台節目表示,簽新合約不代表同意或滿意當中條款,不少員工都表示不想「被解僱」,因此先簽新合約再找工作。(8)


さらに、これら労組は1600名の会員(香港では日本と違い正確には労組の成員とみなされず、クラブ会員扱いなので、幹部と会員という二分法になる)に代行で調停に参加し、本来は新契約期限の延長や、減給を永久的ではなく、短期に限定させる要求を明言していたが、結果は、1600名の会員の代行で新契約にサインをしただけであった。労働者側の大敗北である。これは、行動における労組などではなく、代行で署名をしただけである。つまりこれは、文字通り雇用主側の便宜を図っただけである。行為において労組などではない。


これよりも、むしろ1600名の労働者各人が自主的にそれぞれ調停や訴訟を起こす方がまだ効果的で活路があった。サインをした労働者達は、一時凌ぎをして転職先を見つけるまでの過渡的な雇用期間とみなして屈服した自己を慰めるしかない。それに対して、39名のパイロットや673名の搭乗員らは新契約を拒否して解雇されているが、彼らの方が労働者階級の尊厳を守ったと言える。屈服、無抵抗以上に階級的利益に社会的な悪影響を与えるものはない。


この事件は、コロナ禍の香港での労働争議の中で、代表的な、象徴的な事件であり、香港最強のキャセイパシフィック航空の労組が、あっけなく最初から団体行動権を放棄し、労組としての香港での唯一の交渉手段を否定し、単なる事務的な代行として新契約にサインをしただけと言う衝撃が凄まじいし、茫然自失とさせると言うよりも底抜けの感がある。これは労組の存在意義自体を自己否定した致命的で最悪のケースであり、労働組合自体が香港に実質的に如何に存在していないかをこの上なく示している。従って、従来の御用組合に代わる新しい抵抗の形態の模索と個人による抵抗の意義がより積極的に問われる社会になっている。香港における労組は社会的にもはや死んでいるからだ。



判例法理の検索方法


香港で言う法例、法律とは官僚の自己欺瞞的な指針でしかない守則ではなく、唯一条例である。条例以外は法律ではなく、強制力がない体裁である。法的拘束力の虚構のイメージが蜘蛛の巣の様に、事なかれ主義の行政側の担当者を貫いている。しかも、委任証を受けた外部委託企業の者が公務員代行として振る舞っているのが香港の有様である。


条例の社会的に権威ある解釈理解は、行政ではなく、司法の判例法理によりケースごとに実現確定される。香港は、日本と違いイギリスのコモン・ロー施行なので、尚更判例法理が重視される。法廷の判決で、実在論的に法律条文の未成文化部分が顕在すると言う思想である。


法律の用語や思考は、一般人の一般生活上の用語、慣習や思考、解釈とは相違すると言うのが大前提である。別次元のものの考え方、裁量方法である。


さらに、留意するべきは、香港の行政側は判例法理を明示しないで、法廷と明確な線引きをした対応をするので、判例法理を労働者、市民自体がしっかり理解しておく必要がある。


判例法理は、各裁判の判決書(香港では、判案書と言う)に記録されている。判例法理の検索の手順は以下である。


1、自らの裁判案件のケース番号か、ニュースや労働組織や裁判所や弁護士などのサイトで紹介している当該裁判案件のケース番号から検索するしかない。とにかく、キーワードのカテゴリーからではなく、裁判案件のケース番号から検索するのが手順。ケース番号が必須で、検索では主要である。


2、司法機関(司法機構)の法律参考資料システム(法律參考資料系統)で、判決書を検索するのがベストである。


判決書(判例法理)の検索

Judgments


3、労働問題では、多くはまず労資審裁処の判例を見ることが多い。法律参考資料システム(法律參考資料系統)で、その他(miscellaneous)を選択すると労資審裁処が出てくるし、今は2008年と2012年のケースが紹介されている。


4、ケース番号の見方は、各裁判所の案件には種類に応じたアルファベットが付されているので、その表はHong Kong Special Administrative RegionJudiciary Courts and Cases Typesであり、法律参考資料システム(法律參考資料系統)の検索入力欄の右下の案件種類索引(case type list)をクリックすれば出てくる。


労資審裁処のケース番号を例にすると、その識別用のアルファベット接頭辞(prefix)

は、LBTCであり、それに番号 / 年号が続くという形式である。


例えば、LBTC 595/2012の如くである。これが、検索でも入力する形式である。



知っておくべき判例法理


各種類の労働問題において確立している重要な判例法理を知る事は、真に条例を理解する事である。検索したケースによっては、そのまま上訴の記録も付されているので、クリックすればいい。以下は、システムから検索可能で、重要な判決を列記する。


1、フリーランス契約を強いられ労働者性を争ったケース


HCLA 43/2006 (LEUNG KAM WAH v. FUNG YUK CHING YVONNE t/a HONG KONG TRANSPORTATION CO) 雇用関係が客観的に存在する場合、その労働者性を何らかの協議で変質させる事はできない。香港の日本よりも優れている点がこれである。


FACV 14/ 2006 POON CHAU NAM v. YIM SIU CHEUNG t/a YAT CHEUNG AIRCONDITIONING & ELECTRIC CO


2、日雇い労働の雇用主責任を争ったケース:


CACV146/1996 (CHENG YUEN v. THE ROYAL HONG KONG GOLF CLUB)

香港にも存在する多重派遣の問題、上記の個人事業主扱いとも重なる問題だが、日雇いのカジュアル労働も、毎日仕事をする責任はなく、雇用主との相互責任はないとしても、それが雇用関係の有無とは別問題であるとして、日雇い労働者にも雇用条例の連続性の契約の定義が妥当する事を確立した。(これを単に継続雇用と訳すと日雇い雇用と矛盾し、日本の国内の概念に邪魔され、この特殊性が分かりづらくなる。特殊性には特殊性に応じた訳が必要である。)


3、過失の累積効果による懲戒免職の是非を争ったケース:


HCLA 99/2003 CHAN CHING MAN v. ORIENTAL LOGISTICS CO LTD

女性職員へセクハラ行為を繰り返した職員に対し、雇用主は安全な労働環境とその女性職員をハラスメントから守る責任があるといういわゆる雇用主側の安全責任にも言及して、行為の累積効果による懲戒免職を妥当とし、解雇に伴う補償を免除した。


その他の懲戒免職のケースに以下がある。


HCLA 81/2005 (LAU PUI SANG v. MAXIM'S CATERERS LTD)

職員が兼業をしていたのを就業規則違反として懲戒解雇しているが、異業種である事から就業規則違反には該当しないとし、解雇無効の法理を確定した。


HCLA 136/1996(LAM TZE YING AND OTHERS v. MARIA COLLEGE

常習的な職務怠慢を懲戒免職にはできない。このケースでは、学生のアンケートでパフォーマンスが悪い教員三人を、常習的な職務怠慢として懲戒解雇したことが無効になった。アンケートや意見を、厳重な過失の根拠には出来ない事も確立した。


4、解雇における理由の明示に関するケース:


FACV 13/2011 (CAMPBELL RICHARD BLAKENEY-WILLIAMS AND OTHERS v. CATHAY PACIFIC AIRWAYS LTD AND OTHERS

香港では、被雇用者も雇用主も雇用契約の解消に関して、理由を相手に明示する必要がない。理由を明示する必要があるのは、唯一雇用主側が補償を労働者側に支払いたくない場合である。このケースでは、雇用主が行為が不当である事を理由に解雇する場合に、補償が十分払われさえすれば、労働者側は受け入れる以外にない事を確定した。これは、一方的であるが、ポイントはあくまで法定の補償が支払われる事が法的条件である。


解雇理由に関する他の重要ケース:


FACV 2/2005 (THOMAS VINCENT v. SOUTH CHINA MORNING POST PUBLISHERS LTD

これも香港特有で、よく解雇理由を羅列する粗暴な人事部がいるが、それは素人であり、煩雑な理由の列挙は、どれが真の理由であるかの証明を困難、不可にし、言い訳、言いがかりでしかない事をそれ自体露呈する。煩雑な諸理由の列挙・諸理由の列挙による煩雑さは、香港では法廷に受容されずに、単純に真の理由であるか否かによってのみ、不当解雇が判別される。


CACV 268/2009 (CAMPBELL RICHARD BLAKENEY-WILLIAMS AND OTHERS v. CATHAY PACIFIC AIRWAYS LTD AND ANOTHER

雇用条例第32K条(a)での被雇用者の行為とは、不当な行為である必要はなく、しかも、雇用主が被雇用者の行為を理由に解雇をした事が合理的か否かでもなく、その理由が言いがかりでもなく、煩雑でもなく、真の理由であるか否かという点で判定される。


つまり、言いがかりであるならば、その解雇行為が違法という事になる。


5、不当解雇に関するケース:


HCLA 40/2002 (許婉心 訴 DAMRAK CO LTD

雇用条例では、シックリーブの間の解雇を禁止しているだけで、よく病気で休み、シックリーブを繰り返す事が業務を妨げる場合に、解雇理由になるという事が確定した。


DCCJ 4016/2006 (CHAN KAM YAU AND ANOTHER v. THE HONG KONG UNIVERSITY OF SCIENCE & TECHNOLOGY Defendant

雇用契約の条項は、一方的に同意なしで変更できない。しかし、例えば、MPF(公積金計畫)のプランの変更を会社として真に業務上する事が必要である類のものは同意なしでもできる。また、そうした社会制度に関連した業務上の必要性ではない、個人の使用期間の延長は、契約条項の変更であり、被雇用者の同意なしには出来ない。


6、推定解雇、つまり実質的な解雇相当である事を争うケース:


HCLA 27/2005(王曉秋 訴 救世軍港澳軍區

解雇を暗示し、離職強要をする手口は香港も日本も共通であるが、このケースでは、被害者の女性職員は、解雇で被告に脅された際に、自主的な退職により、以後の求職活動への悪影響や憂いを取り払うべく妥協案を提示し、懇願したが、被告が即時解雇(懲戒解雇)をしてきたので、原告は即時退職した。この様な圧力をかけられての退職は例え、手続き上は自主的であれ、解雇の脅迫を背景にしている為に、解雇相当と確定した。これが、推定解雇の法理である。極めて重要な判例法理の一つである。


また、これとは別次元の問題として、解雇でなくては補償が基本生じないので、資本家には有利である。なぜ退職強要をするかというと、退職したらそれに伴うものだけでなく、雇用条例のその他の補償を自ら放棄する事になるからだ。こんなにありがたい事は資本家側にはないからなのである。これを狙う人事部・法務部や管理職や資本家は、人間ではない。なぜならそれは、他者の生存権を蹂躙する事を意味するからだ。殺人に等しい。


HCLA 8/2007(MAK LYTHRUM v. WINDSOR JOAILLIERS LTD

上記とは別の側面から解雇相当を扱ったケースであり、しかも、解雇相当とみなす5つの条件を確立した判決である。解雇相当の判断は簡単ではなく、また双方の字句や双方による雇用契約解消の手段や方法だけを見るのではなく、実質的にどちらが本当に雇用契約を終了したかという点による。


ここで、労働者は要注意するべき点は、解雇相当の条件を構成するには、雇用主側の言い分或いは欲しがっている言質を拒否する、与えないという点が決定的に重要である。


また、解雇相当を勝ち取っても、解雇予告手当てがケースによっては取得できない事も明らかになった。


辞職に関しては、別の見方もでき、履歴上は比較的ましというのは事実だし、年休手当の補償が得られるので、何も利点がないわけではない。逆に、この様な資本側に関しては徹底的に手間をかけさせ、法的要求をし、行政或いは司法機関を動かし、それを取得する事が最低限の社会的な抵抗となる。そして、それは企業の社会的な履歴・記録にもなる。違法行為をしたという事実は消えないのである。


CACV 55/2000(EVELYN SEMANA BACHICHA v. POON SHIU MAN HENRY

解雇同意書を使い、サインを強要した被告に対して、ハウスメイドの原告は拒否したが、その後にホストの夫婦のうち、夫が使用人であるのに、妻に管理を任せ、暴力や警察沙汰にしてホストの家から追い出すなど、苛酷な待遇を、社会的に人権が制約されている為にホストに依存するしかない原告に対して行った。傷害への損害補償はもちろんだが、雇用主が妻に管理義務を任せた点が、中でも契約に本源的な相互信用の暗黙条項に違反したとして、さらに加えて、苦役強要、休息日を与えない、殴打、ホストの家以外に、他の三軒を清掃させたり、これらの不当行為が解雇相当になると判定し、解雇予告手当てとは別に、損害賠償として12ヶ月分の賃金支払いが命じられている。


7、遅刻が欠勤に該当するか、そして遅刻で賃金控除が合法かを争ったケース:


HCLA 42/2000(麥永富 訴 滙進髮舍

極めて重要な香港の労働者側の勝利であり、遅刻は欠勤ではなく、正確には賃金控除可能な欠勤とは丸一日或いは半日から該当する事が確定した。従って、遅刻時間分の賃金を控除する事はできない。遅刻の場合の賃金控除は違法である。これは特に月給や案件ごとの出来高で賃金が払われる出来高給(件工;piece rate wage)の場合に該当する。


8、雇用主・使用者の裁量権によるボーナスか契約で確約したボーナスかに関するケース:


HCA 12524/1998 (JOANNE KAY WOOD v. JARDINE FLEMING HOLDINGS LTD.

この判決で、雇用主には裁量権があり、法廷は裁量権自体には介入しないが、それが非理性的に、横暴に、反復無常に乱用された場合に介入する事が確定した。従って、法廷は不合理にその裁量権がボーナスの支払いに使用された場合には介入しないという意味でもある。これは、法廷の観点が、雇用主の観点に取って代わってボーナス支払いを決めるものではない事を意味している。


雇用主が裁量権によるボーナスと勘違いしているケース


HCLA 85/1999 (周裕貞 訴 THE EXECUTIVE CENTRE LTD.

裁量権によるボーナスと条件付きのボーナスは対立物であり、前者にはならない事が確定した。つまり、会社の業績によってはボーナスを支払うというのは契約で支払いが条件づけられたボーナスであり、裁量権によるボーナスではない。裁量権とは、自由で、独立して、それ自体の意思のみで決定されるものであり、条件付きではない。ここでは、被雇用者のパフォーマンスではなく、会社自体の業績が条件づけられているケースである。


全体的に支払われる裁量権によるボーナスのケース


CACV 253/2002 (THOMAS VINCENT v. SOUTH CHINA MORNING POST PUBLISHERS LTD

集団単位で支払う裁量権によるボーナスで、個別に支払わない事が争議に発展したケースであり、この場合には、全体に支払うか否かしか裁量権がない事が確定した。従って、その全体の単位の中の誰かには支払わないというのは違法である。


ボーナスが賃金か否かに関するケース


HCA 636/2007 (ICAP (HONG KONG) LTD v. ELAINE CHAN

裁量によるボーナスも、半年ごとのボーナスも、ダブルペイも全てボーナスというものは賃金ではなく、従って、予告手当てに含めて計算する賃金には包括されない事が確定した。


9、コミッション(歩合)も雇用関係における福利計算時に含めるかを争ったケース:


FACV 17/2005 (LISBETH ENTERPRISES LTD v. MANDY LUK

この判決では、累積表があり、商売がよければ良いほど歩合が良くなる方式である場合に、有給休暇や年休手当を計算する場合に、歩合の収入は計算に含めない事が確定したが、累積表がない場合を想定していないで、1日あたりの計算により、累積表のない歩合の場合は賃金に含まれると言える。また、コミッション(歩合)も賃金である事をこの判決は否定していない。