top of page
Writer's pictureRyota Nakanishi

香港労働 Hong Kong Labor Issues #16 日本人のための香港労働問題研究:日雇い労働者の福利はどうなるか?雇用条例最大の落とし穴418ルール

Updated: Nov 3, 2023


香港労働 Hong Kong Labor Issues
FILE PHOTO: Ivan The Terrible (1944) © Mosfilm

パートタイム、日雇い労働の福利を左右する418ルール

パートタイム、日雇い労働の非正規雇用のケースで、日雇い労働者およびパートタイム労働者の福利および労働法における保障を社会的に考察する時には大別して二つの方面がある。

一つ目は、雇用契約解除の予告手当と違法解雇(不当解雇)であり、例えば労災時や妊娠時に簡単に解雇されることである。

2つ目は、その他の解雇の場合の福利であり、年休、法定休日(勤労休日)、事業閉鎖に伴う遣散費、長期勤務手当等である。

この二つの方向性は、峻別して処理する必要がある。なぜならば、この二つの方向の解雇に対する定義が異なるからである。

この問題は、雇用条例最大の欠陥に関わる重要問題であり、日雇いのみならず、パートタイムにも共通した問題である。

ここで注意するべきは、現地の所謂連續性合約とは、日系の人材コンサルタント達が勘違いしている様な単なる日本的な国内感覚の継続的雇用ではないので、香港の連続性の特殊概念として認識する必要がある。香港の連続性の特殊概念は、通称418と言われる。以下の説明からも例えば、417(4週間以上、毎週17時間勤務の継続的雇用)では継続的雇用でも、香港の連続性の特殊概念には該当しない。

418ルール(4週間以上の期間の連続した雇傭契約で、週18時間以上を法定福利厚生の対象とする)とは、その労働条件に満たない労働は、福利厚生において労働法制の適用外に置かれるという致命的欠陥である。これは、フリーランスの労働者なる違法形態と違うのは、労働者でありながら合法的に労働法の保障の適用外に置かれるという状況である。香港のパートタイム、非正規労働の最悪の欠陥の一つである。香港では単発労働ではなく、連続した契約という点が日本以上に重要である。この労働法制上の差異は無視できない。(註1)

つまり、連続性の契約が香港では、雇用条例等(雇用条例は、労働法を構成する一条例であり全てではない)の保障する福利や法的保護を全て得る為の条件になる。ここでは、同一の雇用主、資本家との契約の上に、連続満4週間、各週ごとの労働が18時間を下回らない時にこの概念が妥当する。

休暇、遣散費、長期勤務手当等からの考察

年休、法定休日(勤労休日)、事業閉鎖に伴う遣散費、長期勤務手当などから考察すると、雇用条例第3条及び付則1を参照しなければならない。まず、労働者が有給を獲得するか否かは、労働契約が連続性の契約であるかが重点になる。

雇用条例第3条:

3.

Meaning of continuous contract and onus of proof thereof

(1)

In this Ordinance,

continuous contract

(連續性合約) means a contract of employment under which an employee is deemed by virtue of the provisions of the First Schedule to be in continuous employment.

(2)

In any dispute as to whether a contract of employment is a continuous contract the onus of proving that it is not a continuous contract shall be on the employer.

(Added 5 of 1970 s. 4. Amended 71 of 1970 s. 2)

付則1-2 では労働者が雇用契約に基づいて既に4週間以上雇用されている時は、連続して雇用されているとみなされる。そして、問題の付則1-3(1)は1週間に18時間以上の労働でなくては、当該期間を1週間の労働として認定しない。(註2)

付則1-2:

2.

Subject to the following provisions, where at any time an employee has been employed under a contract of employment during the period of 4 or more weeks next preceding such time he shall be deemed to have been in continuous employment during that period.

付則1-3:

3.

(1)

For the purposes of paragraph 2, no week shall count unless the employee has worked for 18 hours or more in that week, and in determining whether he has worked in any hour the provisions of sub-paragraph (2) shall apply.

(2)

If in any hour the employee is, for the whole or part of the hour—

(a)

incapable of work in consequence of sickness or injury; provided that any such incapability in excess of 48 hours is supported by a certificate issued by a registered medical practitioner, registered Chinese medicine practitioner or registered dentist; or

(Amended 5 of 1995 s. 11; 16 of 2006 s. 10)

(b)

absent from work in circumstances such that, by law, mutual arrangement or the custom of the trade, business or undertaking, he is regarded as continuing in the employment of his employer for any purpose,

then, save as provided in paragraph 4, that hour shall count as an hour in which he has worked.

また、日本と香港では1週間の概念にも差異がある。香港は、土曜日を一つの週の最後の日として考え、日本のように日曜日を最後の日と考えない。

連続性の契約が中断したとみなされる場合とは?

雇用契約が連続性(継続性)を有する場合、もし労働者が帰省したりして労働への帰還が未定になったり、欠勤三ヶ月以上となると法廷に継続性の契約が中断したとみなされる可能性がある。法律判断は当事者ではなく、あくまで法廷である。

判例法理:Poon Chau Nam v Yim Siu Cheung Trading as Yat Cheung Airconditioning & Electric Co. (FACV 14/2006)では、法廷は労使双方に相互責任(mutual obligation)があると判断し、相互に相手のために働き、あるいは仕事を提供する義務があるとした。

法廷は従って、労使双方に一つの全体としての合約や包括的な合約により、雇用契約が途切れることがないと判断し、労働者がこうして勤務年月に基づく福利を得ることが可能になる。長期勤務手当がそれだ。労働者は勝手に自分でこの点も判断しない方があくまで有利である。(3)

試用期間と福利について

連続した継続性の契約は、三ヶ月を超えて勤務したら、労働者が例え辞職したり、解雇されても、その時点で年休や法定の有給休暇が得られる。

解約予告手当の雇い止めと解雇の場合の区別

まず、期間限定契約(Fixed Term Contract; Contract; 契約社員或いは業務委託のフリーランス)もしくは、一つの目的や任務で招傭された労働者。そして、任期が切れる、契約満了、任務完了した場合、これらは雇い止めであり、解雇とはみなされない。

この点が日本と微妙に異なる。このような雇い止めの場合は解雇ではないので、解雇予告手当は不要になる。

判例法理:Wong Man Kwan & Others v Chun Shing Holdings Ltd. (2003) 3 HKLRD 403では、日雇いは1日の合約とみなされるが、この場合双方に相手に対して仕事の提供や勤務する相互責任がない場合、雇い止めは解雇とは峻別される。(4)

通知期間は、労使双方で議定した法定の最低限の通知期間である計7日に下回らない休みで計算しなくてはならない。

雇用条例第70条は労働者のためにある

あくまで法定の福利は最低限度(労基法も最低限度という基準を定めるが、あくまで最低限のライン。しかも雇用条例は不完全であり、労働法としての体系的な法としての労基法ではない)であり、労使双方の交渉では労働者に不利である。そこでの合意は、サインや署名をしても雇用条例自体に違反したり、その最低基準以下の契約は無効になる。

雇用条例第70条:

70.

Contracting out

Any term of a contract of employment which purports to extinguish or reduce any right, benefit or protection conferred upon the employee by this Ordinance shall be void.

(Added 5 of 1970 s. 8)

Notes


香港労働問題研究論考30章

(以下リンクより各論考へ)

...................................................



 

香港で労使紛争に遭った場合の基礎的な注意事項

1、もし、雇用主と労働条件で労使紛争が起きた場合、直ぐに衝動的に書面や口頭で雇用契約を終了しないこと。当然、香港の人事部はマネージメントの追随及び人事の事務処理代行の域をでない低劣さが顕著なので、まずは、労働組合や労働問題の経験ある弁護士に一定期間相談するべきである。その上でも終了はいつでもできる。人材会社の連中は、日本同様労働問題の相談相手ではない。連中は、広告主である企業の人事部の意向と方便しか一面的に顧みない。

2、もし、雇用主に解雇された場合、いかなる文書にもサインしないこと。また、何かにサインする前に、自身に不利ではないかまず内容をよく見ること。不明な点は、質問しはっきりさせ、解答が不明瞭ならばサインは拒否するべきである。つまり、理解できないものは拒否すること。下劣な香港マネージメントは手口としてあからさまな詐欺を働く場合もあり、それはサイン無効として追究する道を開く。ここで、重要なのは、サインした全ての公式、非公式の文書はコピーを要求する権利があり、コピーを渡さないならばサインしないことである。このような卑猥な資本主義の犬に屈するくらいならばサインや合意を破棄するべきである。その方が労働者の精神的利害及び社会的契約上の権利の実現と言える。日本の求人詐欺の手口は基本的に香港でも存在している。多くの多国籍企業のアジア太平洋地区の本部は香港であり、人事部が実は香港という大企業も少なくない。手口自体の共通性はここから来ている。

3、紙媒体か電子媒体かを問わず、全ての企業関連の文書を保存すること。これは、雇用契約書から、就業証明、給与支払報告書、税報告書、解雇通知書などを含み、その後労働者の受けるべき権益を要求する基礎になる。


References

1.《勞資審裁處條例》https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap25!zh-Hant-HK

2.香港法例第57章《僱傭條例》僱傭保障Q&A http://www.labour.gov.hk/tc/faq/cap57k_whole.htm

3.勞資審裁處表格 http://www.judiciary.hk/tc/crt_services/forms/labour.htm

4.勞資審裁處條例 https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap25!en

5.第338章 《小額錢債審裁處條例》https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap338

6.Cap. 347 LIMITATION ORDINANCE https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap347!en?INDEX_CS=N

7.Cap. 149 General Holidays Ordinance https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap149

8.判例集 https://www.elegislation.gov.hk


雇用条例の全文は、以下の二つのリンクが有用である。日本語は、完訳済みである。


English: https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap57

Chinese: https://www.labour.gov.hk/tc/public/ConciseGuide.htm

Statement

This series of articles about HK labor issues is written by Japanese due to supporting Japanese workers in Hong Kong where differs from Japanese working environment. Moreover, there is no labor consultant for Japanese workers in Hong Kong while facing blood sucking Japanese recruit agents and overseas Japanese 'Black Kigyo' (Evil Companies).  

Any part of this report may be disseminated without permission, provided attribution to Ryota Nakanishi as author and a link to www.ryotanakanishi.com is provided.

注意:香港には、日本人のための労働相談所はない。また、総じて労働問題対策の出版物は皆無に等しい。日本語だけでは、極めて危険な状態である。香港でも会社の人事部、就職エージェントや企業の人事コンサルタントなどはすべて行為において資本家側であり、自分たちも労働者であるのに、むしろ労働者と敵対するので、要注意だ。会社外の労組へ相談するべきだ。香港では日本人で労働問題を論じている者がいないと言うことはできない。私は永久に労働者階級のために階級闘争を戦う。階級闘争とは、労働者の階級的利害のための一切の社会的な闘いである。


香港労働 Hong Kong Labor Issues
Ryota Nakanishi's Hong Kong labor law knowledge was qualified by professional examination by HKFTU in 2019.
Ryota Nakanishi's Hong Kong labor law knowledge was qualified by professional examination by HKFTU in 2019.
Ryota Nakanishi's Hong Kong labor law knowledge was qualified by professional examination by HKFTU in 2019.

 

Copyright Disclaimer Under Section 107 of the Copyright Act 1976, allowance is made for "fair use" for purposes such as criticism, comment, news reporting, teaching, scholarship, and research. Fair use is a use permitted by copyright statute that might otherwise be infringing. Non-profit, educational or personal use tips the balance in favour of fair use.

Bình luận


bottom of page