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香港労働 Hong Kong Labor Issues #29 日本人のための香港労働問題研究:多重派遣と同様の雇用主不明の問題

Updated: Aug 6, 2021

#香港労働法 #日本人 #HongKong #Labor #Issues

この日本の労働環境の典型的現象は、そのまま香港にも当てはまる。

香港における人材派遣業の実態と問題

香港では、派遣法自体はないが、派遣業者は中国大陸への派遣労働者業としても確かに日本の派遣労働者と類似した雇用の形態は出現している

知ったかぶりの労務コンサルタント達は香港には派遣業はないというのは、労働環境の実際ではない。既に事例も被害も起きている。

日本でも、請負労働者と派遣労働者という区分が業者自体によって創作されているが、要するに派遣労働者であり、前者はアルバイト契約として派遣元に契約し、多重の派遣先で請負業務(業務委託)として労働するアルバイトの派遣労働者であるという感覚があるが、単独の個人としてみると、請負労働者とはまさに多重間接雇用のフリーランスの労働者という違法形態である。(1)

つまり、派遣元Aから派遣されて、派遣先Bに派遣されて、実際としては不可避的にそのBの社員と派遣先Cの指示を両方現場で受ける部分だけを殊更強調して、入り組んだ派遣の全体構図を隠している。アルバイトとは言いながら、直接雇用ではなく、法律用語ではないからと欺瞞的にこの語を用いるが、偽装請負、偽装派遣労働である。

ここでも請負労働者という造語は、各企業ごとの定義があり(一般用語としての意味、法律用語としての意味、企業ごとの用語としての意味は混同してはならない)、派遣先の企業で、派遣元の社員の指示で働くアルバイト契約を指すか、アルバイト契約の派遣労働者か、フリーランスの労働者なる代物か、派遣のフリーランス労働者なるものかのいずれかである。

日本も、香港も派遣社員と、アルバイト(パートタイム)、フリーランスの異なる形態が巧みに混ぜ合わされている状況である。アルバイトの派遣労働者は存在する。派遣労働者は、契約社員とは現在は限らない。香港の場合は、更に境界がないと言ってもいい。

派遣労働者は、指揮命令権が契約社員契約(派遣労働者は交通費が出ない)を結ぶ派遣元と、派遣先の企業にある。

問題は、派遣先の企業から他の数社へ派遣され、派遣先の派遣先が指揮命令をするのが違法であるのに(ここに請負労働と派遣労働の違法性の違いの一つがある)、実際は指揮命令をしている偽装請負問題にとどまらない。

多重派遣の場合、指揮命令権を有する雇用主の責任追及が困難になる問題がある。請負労働、派遣労働、直接間接のフリーランスの労働は日本においては同じ非正規雇用の範疇でも、直接雇用のアルバイト(パートタイム、フルタイム)、契約社員、嘱託社員よりも劣悪な労働環境である。

正社員の出向、出張、駐在とはわけが違う。労働問題の発生時に直接責任追及を行う際に困難があるからだ。直接雇用か否かがポイントになる。労働市場を際限なく混沌としたものにする間接雇用を主流にしてはならない。

香港の業務委託、請負業務の賃金遅延、未払い問題は甚だしい

香港の建築業は、ことにこの問題と関連がある。香港の法例では、もし直接の雇用主が、賃金未払いの場合、当該工事の第一の請負先とその孫請け企業が建設業界の労働者の最初の未払いの賃金を支払う。この場合、既に全ての工事費を請負元が請負先に支払っていることは賃金未払いの合法的な理由にならない法理が確立している。

逆に言うと、建設業及び請負業務においては賃金の未払いや遅延が甚だしいことが分かる。そうでなくては、このような特殊な法例は成立しない。

この法例の原因は、香港の建設業界の労働では建設労働者はその工事において誰が自分の雇用主か不明な場合が多い。まさに、日本的な多重派遣の問題の際の雇用主不明の問題である。

そして、雇用主が失踪した場合も、労働者はその未払い賃金を請求するすべがない。そこで、上部の請負先も孫請けに対して責任を負う仕組みが生まれた。この領域にも外国人労働者はいるが、本論考の対象の日本人が現場労働者というのは不明だが、建設業界の工事関連労働者に広範に適用されるので、参考にはなる。

Sub-contractor’s employees’ wages

43C.

Liability of principal contractor and superior sub-contractor to pay wages of employees of sub-contractors

(1)

Subject to this Part, if any wages become due to an employee who is employed by a sub-contractor on any work which the sub-contractor has contracted to perform, and such wages are not paid within the period specified in section 23, 24 or 25, as the case may be, such wages shall be payable to the employee—

(a)

where the sub-contractor has contracted with the principal contractor, by the principal contractor; and

(b)

where the sub-contractor has contracted with a superior sub-contractor, by the principal contractor and every superior sub-contractor to the sub-contractor, jointly and severally.

(2)

The liability of a principal contractor and of a principal contractor and superior sub-contractor or superior sub-contractors jointly and severally under subsection (1) shall be limited—

(a)

to the wages of an employee whose employment relates wholly to the work which the principal contractor has contracted to perform and whose place of employment is wholly on the site of the building works; and

(b)

to the wages due to such an employee for 2 months without any deductions under this Ordinance and such months shall be the first 2 months of the period in respect of which the wages are due to the employee.

(3)

Subject to subsection (4) the wages payable under subsection (1) shall be paid by the principal contractor or superior sub-contractor, as the case may be, not later than 30 days after the date on which a notice under section 43D is received by him or service thereof is deemed to be effected on him.

(4)

Where any claim in respect of the wages payable under subsection (1) is filed with the Minor Employment Claims Adjudication Board or Labour Tribunal and an award or order is made in favour of the employee, the wages shall be paid within such time as the Minor Employment Claims Adjudication Board or Labour Tribunal may direct, or, in the absence of any direction, not later than 30 days after the making of the award or order.

(Amended 61 of 1994 s. 53)

(2)

建設業界の労働者が未払い賃金の請求を行う時効

香港の建設業界の労働者は、未払い賃金を要求する場合、賃金支払い期限が過ぎた60日以内(あるいは、労工所の所長が許可した場合、90日以内の額外の期限が得られる。合計150日となるので、別途延長手続きは不要)に総元の請負先企業(Principal Contractor)か、その下の指定の主要な請負先企業(Superior Nominated Subcontractor)に対して書面で通知しなくてはならない。

この条例の保障を受ける職種

それでは、直接雇用されて会計をする場合、その上の請負委託先に未払い賃金を要求できるか?この保障は、建築工事の現場の肉体労働のみに適用されるのか?

上記の雇用条例第43C(2)条に条件がある。

第一の条件は、関連した仕事であるが、これは建築工事、建築工事及び建築工事関連での肉体労働である。

第二の条件は、当該労働者の仕事は、請求先としたい総元の請負先企業との契約において進行している仕事と関連し、その仕事場所は、完全にその工事が行われる場所でなくてはならない。

従って、同じ会計でもその工事現場の職場でなくては、保障外になるし、部分的に工事現場と他の場所で労働するドライバーは、この保障をどこまで受けるかで問題になる。

保障された賃金

保障は2ヶ月の賃金である。60日や60日の仕事日の賃金ではない。

例えば、最初の月の月給支払いが少なく、3ヶ月目に甚だしく未払いが多い場合、此の法例により、3ヶ月目の未払い賃金を総元の請負先企業へ要求できない問題がある。

これに対して、請負先企業へ求められるのは、すべての工事労働者の勤務状況を記録し管理するという当然するべき義務を果たすことである。

そして、管理職は、常に工事労働者の人数を把握し、賃金未払いが起きていないか把握に努めることである。もし、孫請け業者がさらに孫請けさせる場合は、その書面の契約書を要求し、工事労働者とその孫請け企業の所在地などを把握し、失踪に備えることである。あまりにも杜撰な労務管理が広がっており、そのツケを最も受けるのは最も立場の弱い労働者である。

Notes


1. Keiichirou Hamaguchi. What the Point of Freelanced Worker? ; http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no218/houkoku_2.pdf Accessed June 30, 2018.

2. EMPLOYMENT ORDINANCE, 43C ;https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap57?xpid=ID_1438403463834_001 Accessed June 30, 2018.

香港労働問題研究論考30章

(以下リンクより各論考へ)

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