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香港労働 Hong Kong Labor Issues #31 日本人のための香港労働問題研究:HMV倒産劇に見る整理解雇の実態

Updated: Aug 6, 2021

#香港労働法 #日本人 #HongKong #Labor #Issues

概観


香港全体の映像関連商品市場は、リアル店舗限定で述べるとこの倒産したHMVCD WAREHOUSE二社が大手販売チェーンで、レンタルチェーンはなく、後は大手書店内のコーナーや個別のリテール業者やレンタル業を兼務する個人店舗による販売で、その数や遭遇する頻度は日本のTSUTAYAほど多くはない。書店よりも香港では目にする事は少ないというのが正確な生活感覚と洞察である。また、価格帯はAmazonより断然高いので、Amazonから購入する方が安いので、本土の正規品以外で代替できない作品以外は、消費者のメリットは元々なかった。映像業界のプロとしても取り分け敏感な領域である。


香港のリテール市場において、映像商品は、政府統計處の統計では、その他の未分類の消費物(Other consumer goods, not elsewhere classified)になる。映像商品に特化した統計がないが、その該当分類全体の経済成長は、2017年11月から2018年10月までの現行の統計調査報告を見ても122.9%(+8.5)という高度な調査報告結果になっているのとは対照的である。明らかに個別の現実を、個別の未分類の商品の市場の動向を反映しきれていない統計である。全体としては、良好でも個別の細分類では結果は真逆となるのである。個に全体は含まれることからも抽象たる統計は決して鵜呑みにできない事が分かるし、個別の企業の利潤(剰余価値)の状況を具体的に見て動向判断する必要性がある。


統計上は、この様に好景気でも、部門閉鎖や倒産は香港では多国籍企業では、日本以上に頻発するので、整理解雇の問題を理解する事は、倒産における労働者階級のぶつかる労働問題に備える上で重要である。


参考:零售業銷貨額按月統計調查報告


倒産時の債務処理時の手口と被雇用者の境遇


12月18日に突然HMVの労働者達が即時整理解雇された。その際、臨時の債務処理を担当する会計士は、労働者達に二重の曖昧な、矛盾した未払い給与と法的補償金の取得方法を説明したのが問題の手口であり、百四十名の労働者達はいまだに金額が支払われていない。


香港では日常茶飯事の企業倒産は大きく分けて二つの方法で処理されるが、一つは法廷による強制的な債務処理、もう一つは会社や債権者による自主的な債務処理である。労働者達は、当初債権執行人の会計士の言である「これは会社の自主的な債務処理であるから、破欠基金という政府の倒産時の被雇用者への金銭補償の窓口で法定の優先の債務項目である未払い賃金最高額8千香港ドル、予告手当2千香港ドル、遣散費(整理解雇の法定の補償金)などが申請すれば取得できる」と説明したのが大きなミスリードになっている。しかも全体総額では500万香港ドルに上る未払い賃金、有給休暇分が滞納されている。ちなみに、遺散とは整理解雇を意味している。


重点:会社倒産時の労働者の債権補償の申請は、裁判所の強制執行の場合でないとできない

全くの労働者騙しの手口であり、しかも英語中国語版の説明は一致していないし、本年2019年1月の10日にはなんと、債務者の一部である労働者抜きの債権者会議が今後の債権処理の為に開催されると言う。ここに、倒産時にも最も不利益を被るのは他ならぬ経済的弱者である被雇用者(プロレタリアート)達である事が明白である。労働者への支払いを全て後回しにし、しかも整理解雇により債権者となった労働者達への債権者会議からの排斥は、被雇用者の生活軽視であり、明白な階級差別である。労働者はこれに際して労働者組合に相談し継続的な訴えを行っているが、未だ解決は得られず、中国の旧正月をこの膠着した未払い状態で過ごすと言うのを労働者達は強いられている。


それだけではなく、薫じて未払い賃金最高額8千香港ドル、予告手当2千香港ドルを優先的に得た者や、債権処理者に引き続き雇用されてHMVオフィスで勤務する者を除いて、全体としては未だ七十名は確実に未払いの状態と言える。強制執行手続きは取られていないので、申請による道は閉ざされ、債権処理側の自主的な判断で支払われると言う同じ債権者なのに不利な状況に陥るのが労働者側である。


それでも、労組の協力による労働者達は労工處へ法的補償である破産未払い賃金保障基金(破產欠薪保障基金)を申請しているが、まずは法的援助を得て裁判所に強制執行で、申請への道を開いて再度申請すると言う合法的な方法を取っている。しかし、全てが順調に進んでもこの取得までには最低3ヶ月を要するのが相場である。整理解雇は、必ず人事部による事前の協議が行われるので、その時点で即時労働組合に相談するべきだったのである。


会社倒産の処理方法


教科書的には、3つというが大きくは二つである。一つは、上記の自主的な債権処理と裁判所による強制執行である。これらは、もちろん全て被雇用者の整理解雇の危険性である。


1、債務協議:債権者と債務者の協議で、債務金額の一部を払うか、その他の返済方法に同意して、債務者の破産宣告を避ける。これは専門の顧問や会計士が執り行う。


2、移管:担保を持つ債権者が債務者の会社の担保した資産を売却して債務支払いを行う。これも会計士が行う。


3、会社の清算(倒産処理):会社の資産はここでは、優先的に債務売却処理される。


方法としては、法による強制的な倒産という方法と、会社の成員による自主的な倒産、或いは、債権者による自主的な倒産の手段がある。


労働者には、香港では裁判所を介した強制執行でないと以上の事例の様に支払いが後回しにされる。


4、破産:破産と倒産(清盤/liquidation)は香港でも別概念で、破産が個人や共同経営に対して適用されるのに対して、倒産は会社のみに適用される。多くの破産管理人は、政府の破産管理署の委任する破産管理官である。


倒産による売却処理の順序


1、倒産売却処理費用

2、固定担保の債権者

3、優先的な債権者:被雇用者及び政府

4、非固定担保の債権者

5、担保なしの債権者

6、株主


つまり、労働者は優先的な債権者であっても、最優先ではないのである。ここでは不動産処理が最優先され、人間や政府が後回しになっている。ここに香港の経済的な支配階級が不動産業者である事も反映している。


労働者の優先的債権項目


1、未払い賃金:政府に保障されるのは、4ヶ月分の未払い賃金で、最高額は総額で8千香港ドルのみである。

2、予告手当:1ヶ月の給与又は、2千香港ドル。低い方を優先。

3、遣散費:各人最高8千香港ドル。

4、労災補償:金額制限なし。


これは、資本家側には負担にはならないほどの金額で、とても部屋のリースの一ヶ月分にもならないのである。しかし、法定で払うべきものは払わせるのが社会的義務である。もし労働者が上記の金額以上の高額要求をする場合は、優先的な債権者に該当せず、非固定担保の債権者と同じ支払い順序となる。


破産未払い賃金保障基金


1985年に成立した。良い点は、被雇用者は優先的且つ確実に債権項目を申請取得できる。範囲は、以下になる。


1、未払い賃金:法定の賃金概念に該当する賃金で、四ヶ月分の範囲で、各人の最高補償額は3万6千香港ドルである。

2、予告手当:一ヶ月の賃金か2万2千5百香港ドル。低い方が基準になる。

3、未消化の有給手当:日本よりも優れた点は有給買取が法的に定められている点である。これは未消化の累積分や当年の年休比率に応じた額も含めて保証され、各人の最高額は諸々を含めての総額1万500香港ドルである。

4、遣散費:時効があるので申請に注意。申請前の半年以内に起きた支払い責任に対して、最高で5万香港ドル及び残額の半分が保証される。


この倒産における遣散費補償の計算方法がある。事例としては、Aさんがいる会社が倒産で勤務年数により彼が受けるべき遣散費が合計で8万香港ドルとすると、補償される遣散費は以下になる。


50,000 + (80,000-50,000) ✖️50%=65,000HKD


補償は最高5万ドルで、残額は3万香港ドルで、残額補償は半額なので、1万5千香港ドル。合計で保証されるのは6万5千ドルである。


基金の資金源は、ちなみに毎年の商業登記証の付加費である。現時点では付加費は250香港ドルである。


法廷の強制執行による倒産売却処理


1、原因:会社が支払い能力を喪失し、債務が5千香港ドル以上で、債権者がサインした債務取り立て通知書を一部、登記してある会社オフィスに送付して、3週間以内になんら適当な手段が講じられない場合。


2、処理の順序:

a.債権者がまず手続きに要する費用1万2千150香港ドルを支払う。

b.申請書を会社やその移管人へと送付。

c.債権者が宣誓書を準備。

d.開廷前の7日に、政府公刊物及び香港の新聞で規定の格式で通告する。

e.審議

f.法廷が執行命令を出す。被雇用者は自動的に解雇される。

g.会社の資産が20万香港ドルを超えない場合、簡易的な倒産処理。


労工處所長の権限


以下の状況で、破産或いは倒産売却時の申請をしていなくても、当該基金より支払いを行う権限を有する。


1、経済的原則に符合しない。

2、被雇用者が20人以下。


又、例え労働者達の未払い賃金が5千香港ドル以下であり、破産や倒産処理の申請をする資格がなくても、所長は未払い賃金を基金から補償する権限を有する。


したがって、労働組合の労工處への働きかけが有効となるし、必須となる。そして、この働きかけを行う十分な能力を香港の労組は有している。


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香港で労使紛争に遭った場合の基礎的な注意事項


1、もし、雇用主と労働条件で労使紛争が起きた場合、直ぐに衝動的に書面や口頭で雇用契約を終了しないこと。当然、香港の人事部はマネージメントの追随及び人事の事務処理代行の域をでない低劣さが顕著なので、まずは、労働組合や労働問題の経験ある弁護士に一定期間相談するべきである。その上でも終了はいつでもできる。人材会社の連中は、日本同様労働問題の相談相手ではない。連中は、広告主である企業の人事部の意向と方便しか一面的に顧みない。

2、もし、雇用主に解雇された場合、いかなる文書にもサインしないこと。また、何かにサインする前に、自身に不利ではないかまず内容をよく見ること。不明な点は、質問しはっきりさせ、解答が不明瞭ならばサインは拒否するべきである。つまり、理解できないものは拒否すること。下劣な香港マネージメントは手口としてあからさまな詐欺を働く場合もあり、それはサイン無効として追究する道を開く。ここで、重要なのは、サインした全ての公式、非公式の文書はコピーを要求する権利があり、コピーを渡さないならばサインしないことである。このような卑猥な資本主義の犬に屈するくらいならばサインや合意を破棄するべきである。その方が労働者の精神的利害及び社会的契約上の権利の実現と言える。日本の求人詐欺の手口は基本的に香港でも存在している。多くの多国籍企業のアジア太平洋地区の本部は香港であり、人事部が実は香港という大企業も少なくない。手口自体の共通性はここから来ている。

3、紙媒体か電子媒体かを問わず、全ての企業関連の文書を保存すること。これは、雇用契約書から、就業証明、給与支払報告書、税報告書、解雇通知書などを含み、その後労働者の受けるべき権益を要求する基礎になる。

4、労組としては団交ができず理想形態ではないが、香港の信頼できる最大の労働組合連合である工聯会に相談すること。相談窓口は、以下の連絡先がある。労働組合は、労働者の社会的な団結の具体的な組織形態であり、法的には労働者の団結の存在形態とは労働組合である。そして、それは現地の労働者たちの知の集積庫でもある。