日本人のための香港労働問題研究:労働法規(Labor Law)のよくある質問
ブルジョア法制は、資本家の利益を守るための妥協の産物。労働者の利害の為に自覚的に不断に変革されるべき。労働者側が嫌でも直視し、促さなければ誰も代わりにやってくれない。
労働法規(Labor Law)のよくある質問1 香港の雇用労働契約で当該契約が所謂法的保障を受ける連続性の契約(418と言われる4週間の内、毎週合計18時間以上の雇用契約)か否かの労使紛争で、一体誰が当該契約が、非連続性の契約か否かの証明責任を法的に負うのか?
回答:それは、雇用主の側である。雇用主、資本家の側の代表は当該部門の管理職と法務部と人事部になる。法務部も人事部もない規模の企業では、総務部(admin)があれば総務部が担当したりするのは、日本も同様である。非正規のパートタイムは香港では日本以上に劣悪な雇用形態になる理由が、この418ルールにある。労働者は、香港のパートタイムを推奨する連中を断じて信用してはいけない。香港の人事部は日本同様、管理職の言いなりで動くクズである。
質問2 雇用条例(1968年成立)の第何条で、雇用契約内のいかなる条項が被雇用者の雇用条例に定める法的保障を減少もしくは喪失させるものである場合に無効とするのか?
回答:第70条である。これは、日本の労働基準法と共通の違法雇用契約内容の無効化規定であり、自由意志で、同意署名したか否かなどは合理化の理由にならない。もちろん、労働者側が問題にしないで放置してはそのまま存在してしまう。権利行使は、社会的責任である。法律は、権利行使して初めて顕在化するのである。
質問3 妊娠して、その出産前の検査の為に欠勤する場合は、どのような休暇と認められるか?
回答:有給のシックリーブ(病気休暇)である。これは、日本ではまだ制度的に普遍化していないが、香港では標準的な福利である。
質問4 連続性の契約で雇用され勤務する労働者は、毎週最低何日の法定休息日が保障されているか?
回答:日本と同様、法定休日は1日である。
質問5 日雇い労働の遣散費の計算方法は、1日の賃金掛ける何日を掛けて、さらにそれに勤続年数を掛けるのか?
回答: 18日である。つまり、1日の賃金 X 18(日) X 勤続年数となる。 香港の広東語の年資は、勤続年数と訳す。これは、日雇いとケース・プロジェクトごとに雇われるプロジェクトベースの件工の場合も同じ計算方法である。
質問6 もし、労働者がミスや不注意で会社の器物を損壊、遺失した場合、資本家は労働者の賃金から、各ケースごと上限のいくらまで控除できるか?
回答:300香港ドルである。これ以外は、一般法、習慣法、つまり民法、民事訴訟で別途賠償を要求するというのが香港の人事部の観念と入れ知恵である。
質問7 法例に基づくと、有給のシックリーブは何種類に分けられるか?
回答:2種類である。(詳細は、別途論述する予定。)
質問8 労働災害に遭っている期間、労災休暇が法定休暇(労工休暇)にぶつかる場合、当日当該労災労働者が取得できるのはどういう額の賃金か?
回答:全額である。
質問9 雇用条例は、毎週一日の法定休息日を有給と規定しているか?
回答:日本同様、法定休息日は有給か否か規定されていない。
質問10 香港のシックリーブは、毎年蓄積する事ができるが、最大で何日分まで蓄積できるか?
回答:120日である。
質問11 長期服務金の計算:
チェンさんは、肉体労働者でA貿易会社に1971年1月1日に入社したが、彼の雇用主は2015年12月1日に彼に対して一ヶ月の解雇予告期間を通知して解雇した。チェンさんの毎月の賃金の基本給は2万元、勤労手当が2千元、交通手当が千元、電話通話の建て替えは上限が千元。この場合、チェンさんの長期服務金・遣散費は如何に計算するのか?
回答:賃金の定義に基づくと、名称に関わらず、勤労手当や固定で支払われる手当の類は賃金の一部分である。これは、賃金が基本給、勤労手当、交通手当を含み、もちろん建て替え費用は含めないことを意味する。従って、基本給2万元+勤労手当2千元+交通手当千元=賃金2万3千元となる。そして、そして、長期服務金と遣散費の計算方法が同じであることから、月収 X 2/3 X 勤務年数の計算式で行く。さらに、ここで留意すべきは、遣散費には月収計算時の上限額22,500元が定められている。結論で行くと如何になる。
まず月収上限額22,500元かける2➗3で、さらにチェンさんの勤続年数の45(年)をそのまま連続して計算機でかけると、675,000元となるが、遣散費には総額上限額も規定されていて、それは390,000元であるから、大幅に減額してこの上限額そのままになる。
チェンさんの遣散費は、390,000元。
質問12 産休取得期間及びその資格判断:
妊娠したAさんは、事務員として会社に2014年4月1日から勤務し始めた女性職員である。月収は、9千元。彼女は、2014年7月1日に雇用主に対して妊娠を通知し、出産予定日は2015年2月10日とし、その4週間前から産休に入りたいとした。しかし、2015年1月1日に出産した。結果、彼女は何週間の有給の産休期間を得て、かつその産休手当はいくらなのか?
彼女は、入社から出産まで法定の40週間勤務していない点が重点である。従って、法定の有給としての10週間の産休が取得できない。無給の産休しか取得が可能ではない。
従って、取得可能な有給産休はなしであり、その有給金額もなしである。
質問13 労災賠償額(死亡、永久的障害、非永久的障害)の計算:
ワンさんは、2014年8月1日に工事会社に入社した。彼は、2015年3月1日に労災に遭い、3月1日から4月15日まで労災休暇(一種のシックリーブ)を取得した。(この間には法定休暇がないと仮定する)そして、2015年5月2日に労災が認定され、賠償額に関して労災の賠償比率が1%と確定し、ワンさんは当時47歳、労災時の賃金は1万5千元。それでは、この労災休暇期間の支払い金額と賠償額はどうなるのか?
労災休暇(労災期間)の支払い金額は、月収の5分の4の額になる。そして、1か月半を1.5あるいは、(31/31+15/31)として数式化する。一か月は31/31; 半月は15/31として数式化できる。ここでは、1.5としてかけるだけにする。
月収❎4/5❎労災休暇日数の月単位の比率が計算式になる。
労災時の賃金1万5千元にそのまま計算機でそれに4割る5をかけて、労災日数の31/31+15/31である1.5をかけると最後に一万八千元が出る。これが、この期間にあてがわれる労災手当になる。
さらに、賠償金額を計算する際に、このワンさんは、死亡でも永久的な障害でもないが、労災賠償の計算方法は、この場合、死亡と永久的な障害時の計算方法を年齢別に参照して、認定された労災の賠償比率をそれに照らして計算する。この場合、年齢により賠償額が変わる。ワンさんは、47歳であり、40歳から56歳の年齢層になり、永久的な障害の賠償額の七十二か月分の収入という72に対して、認定された比率1%をかけることで個別の非永久的な労災の賠償額が計算される。
月収1万5千元❎72(ワンさんは、47歳なので七十二か月分で計算)❎認定された賠償比率1%が計算式になる。
つまり、計算機でそのまま15,000X72X0.01=10,800HKD
質問13 会社倒産で債権者が裁判所から強制執行をする場合に、労働者への未払い賃金や、解雇予告手当、遣散費の保障額はいくらになるか?
呉さんは、2010年1月1日にある服飾店に入社し、賃金は次の月の1日に支払日を定めた。2015年に当該企業は、債権者の裁判所を通した強制執行で債権処理が行われた。そして、2015年12月31日にその裁判所の命令が下った為に、当該企業は即時倒産閉鎖になった。呉さん逹労働者は突然整理解雇になった(遺散)。
仮定として、この場合、それまで当該企業は未払い賃金がなく、彼の最後の賃金が3万元で、解雇予告手当が二か月、西暦でダブルペイを計算してきたとする。
では、裁判所を通した強制執行が行われる際に可能となる労工所の“破產欠薪保障基金”(“破欠基金”)という、破産未払い賃金保障基金への申請が利用できる。そこで、未払い賃金や、解雇予告手当、遣散費の保障額を計算する。
当該基金は、ダブルペイまで保障する。ダブルペイは、十三か月目の給与と言われるように、一か月の給与なので、未払い分の月収を含めた二か月分の未払い賃金6万元となる。12月の未払い賃金3万元とダブルペイの3万元である。合計6万元が未払い賃金だが、基金には保障可能な未払い賃金の上限額が規定されており、それは3万6千元が上限額であり、この上限額がダブルペイを含めた未払い賃金の保障額になる。
では、解雇予告手当の保障額は、その保障上限額が一か月の解雇予告手当か、22,500HKDの内、金額が低い方を基準とするので、呉さんの月収は3万元なので、この22,500HKDが保障される解雇予告手当の額になる。
そして、遣散費は、呉さんの場合まず5万元を取得してから、残額の半分を受け取る保障になる。
呉さんの遣散費自体は、月収 X 2/3 X 勤務年数である。
月収保障額22,500HKD X 2/3 X 6年(2010−2015)が計算式である。
月収保障額22,500HKDにそのまま計算機で2➗3をかけて、2010−2015年の期間を2010年自体も計算に入れて6年としてかける。すると、9万元が本来の遣散費となる。
しかし、基金では本来の9万元の遣散費ではなく、5万元とその残額の半分の保障となる。
まず保障される5万元に、本来の遣散費から5万元を引いた額のさらに半分を足せば、この遣散費の保障額が計算できる。
先に取得する遣散費保障額5万元+(本来の遣散費9万元➖先に取得する遣散費保障額5万元)÷2が計算式である。
(本来の遣散費9万元➖先に取得する遣散費保障額5万元)÷2の部分の計算で、9万元引く5万元の4万元からその半分である2万元が算出される。
あとは、その2万元と5万元を足すだけである。これで、遣散費保障額の総額が7万元と確定する。
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香港で労使紛争に遭った場合の基礎的な注意事項
1、もし、雇用主と労働条件で労使紛争が起きた場合、直ぐに衝動的に書面や口頭で雇用契約を終了しないこと。当然、香港の人事部はマネージメントの追随及び人事の事務処理代行の域をでない低劣さが顕著なので、まずは、労働組合や労働問題の経験ある弁護士に一定期間相談するべきである。その上でも終了はいつでもできる。人材会社の連中は、日本同様労働問題の相談相手ではない。連中は、広告主である企業の人事部の意向と方便しか一面的に顧みない。
2、もし、雇用主に解雇された場合、いかなる文書にもサインしないこと。また、何かにサインする前に、自身に不利ではないかまず内容をよく見ること。不明な点は、質問しはっきりさせ、解答が不明瞭ならばサインは拒否するべきである。つまり、理解できないものは拒否すること。下劣な香港マネージメントは手口としてあからさまな詐欺を働く場合もあり、それはサイン無効として追究する道を開く。ここで、重要なのは、サインした全ての公式、非公式の文書はコピーを要求する権利があり、コピーを渡さないならばサインしないことである。このような卑猥な資本主義の犬に屈するくらいならばサインや合意を破棄するべきである。その方が労働者の精神的利害及び社会的契約上の権利の実現と言える。日本の求人詐欺の手口は基本的に香港でも存在している。多くの多国籍企業のアジア太平洋地区の本部は香港であり、人事部が実は香港という大企業も少なくない。手口自体の共通性はここから来ている。
3、紙媒体か電子媒体かを問わず、全ての企業関連の文書を保存すること。これは、雇用契約書から、就業証明、給与支払報告書、税報告書、解雇通知書などを含み、その後労働者の受けるべき権益を要求する基礎になる。
References
1.《勞資審裁處條例》https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap25!zh-Hant-HK
2.香港法例第57章《僱傭條例》僱傭保障Q&A http://www.labour.gov.hk/tc/faq/cap57k_whole.htm
3.勞資審裁處表格 http://www.judiciary.hk/tc/crt_services/forms/labour.htm
4.勞資審裁處條例 https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap25!en
5.第338章 《小額錢債審裁處條例》https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap338
6.Cap. 347 LIMITATION ORDINANCE https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap347!en?INDEX_CS=N
7.Cap. 149 General Holidays Ordinance https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap149
8.判例集 https://www.elegislation.gov.hk
雇用条例の全文は、以下の二つのリンクが有用である。日本語は、完訳済みである。
English: https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap57
Chinese: https://www.labour.gov.hk/tc/public/ConciseGuide.htm
Statements
This series of articles about HK labor issues is written by Japanese due to supporting Japanese workers in Hong Kong where differs from Japanese working environment. Moreover, there is no labor consultant for Japanese workers in Hong Kong while facing blood sucking Japanese recruit agents and overseas Japanese 'Black Kigyo' (Evil Companies). Any part of this report may be disseminated without permission, provided attribution to Ryota Nakanishi as author and a link to www.ryotanakanishi.com is provided.
注意:香港には、日本人のための労働相談所はない。また、総じて労働問題対策の出版物は皆無に等しい。日本語だけでは、極めて危険な状態である。香港でも会社の人事部、就職エージェントや企業の人事コンサルタントなどはすべて行為において資本家側であり、自分たちも労働者であるのに、むしろ労働者と敵対するので、要注意だ。会社外の労組へ相談するべきだ。香港では日本人で労働問題を論じている者がいないと言うことはできない。私は永久に労働者階級のために階級闘争を戦う。階級闘争とは、労働者の階級的利害のための一切の社会的な闘いである。
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