香港労働法 Hong Kong Labor Issues #44 日本人のための香港労働問題研究:新型コロナウイルス肺炎の労災未認定下に於ける労災認定と補償について

Updated: May 30

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香港労働法 Hong Kong Labor Issues #44 日本人のための香港労働問題研究:新型コロナウイルス肺炎の労災未認定下に於ける労災認定と補償について
香港労働法 Hong Kong Labor Issues #44 日本人のための香港労働問題研究:新型コロナウイルス肺炎の労災未認定

2020年5月1日 メーデー(労働者の日)に際して


「第18時間は仕事のために、第28時間は休息のために、そして残りの8時間は、私たち自身の好きなことのために」

1886年5月1日にアメリカのシカゴ中心に合衆国カナダ職能労働組合連盟により始まった8時間労働時間制の要求運動という起源と、この日が国際的な労働者階級の連帯と団結の祝日でもある事が忘却され、メーデーの本義を知らないでメーデーという名前しか知らない労働者が多い。


殊に香港では、この日は、完全にフェスティバル化しており、体制派(親中派という訳は不正確であり、建制派とは体制派のことしか意味しない)も反対派も未だ香港で実現できない8時間労働時間制の法制化の要求を法案として立法会に出さず、前者は新型コロナウィルス蔓延下での失業救済金や銀行休日と法定休日の統一などの二次的、近視眼的な一時的な処置にしか言及すらしていない。


香港の労働者階級の最大の欠陥は、まず第一に団体交渉権の欠如であり、同程度に最重要なのは、8時間労働制である。これがないために残業代ゼロであり、過労死及び格差は日本以上なのである。サービス残業は、労働者の生み出す剰余価値の搾取の理想形態であり、資本家側は全く賃金を払わないで、文字通りただ働きさせて、自身は利潤をそのまま得るという盗みである。


香港では、例外として香港民主民生協進會と職工盟の反対派二政党がかろうじて主張するぐらいである。しかも、この2020年の5月1日は、純粋に8時間労働制や団体交渉権を希求する労働者の声ではなく、コロナ蔓延下でも散発的に継続していたが、2019年6月12日以来の反逃亡犯引渡し条例法案のカラー革命の本格的な再開の日となった。


体制派の無能ぶりには失望と倦怠以外にない。今や8時間労働制要求のポーズすら影を潜めた。香港の労働者階級は自身の利害の代表者を未だ欠いているのである。

1. 香港にも労災認定と労災補償の法制はある

『被雇用者補償条例』(僱員補償條例


香港の労働法体制は、何回も何回も繰り返し本論考で言及している様に、所謂雇用条例だけではない。香港の人事部は、入社説明や入社後も、『被雇用者補償条例』(僱員補償條例)を積極的に労働者へ説明することはない傾向にある。そもそも人事部や法務部は資本家代表であり、資本家の利益を労働者の側から守る為に雇用され、企業内部に存在しているのを忘れてはならない。

本論考は、労働者個人及び労働組合の実践と理論だけでなく、常に法務部・人事部の側の労働者に対する実践と理論も考慮視野に入れて、労働者階級の立場、労働者個人の利害の保護の立場を全面的に貫徹するものである。


日本も香港も労災を悪として、労働者の罪悪や労働者のもたらす疫病の様に社内でも喧伝して、労災を起こす労働者自身を咎める空気を醸成するのが資本家側であるのは共通している。これは、資本家の監督責任を歪曲し、労災責任のない労働者の側に非をなすりつけておく事で雇用主の固有の労災責任を曖昧化、果ては放棄するものである。筋違いの倒錯した観念である。この様に資本主義社会では、本末転倒が常態である。真理は往々にして逆立ちさせられている。


常に肝に命じておくべきは、香港の人事部は、労働者の権益を最低限にし、よければ自ら棄権させる事を狙い資本家側の社会的負担をゼロにするのが勤務評価の目標である。又、日本の人事部でも想像のつかないような呆れたトンデモ手口平気で繰り出してくるのが香港の人事部である。従って、労働者は自覚して自らの権益を香港のネオリベ、ネオコン法制下で自覚的に死守しなければならない。労働者にとって香港は、日本よりも難度が高い、世界一労働者保護に欠如した労働環境である。


現在の所謂ネオリベ社会は、一言で概括すると、富の再分配が富裕層から貧困層へではなく、労働者から、貧困層から富裕層への逆の富の再分配になっているのが本質である。従来の福祉社会の真逆のことをし、労働者から富を富裕層へ再分配する富裕層や資本家のための手厚い福祉社会とでも言うべき極端な反動がネオリベ社会である。


この労働者の財産の収奪の過程が、正社員の非正規化、似非フリーランス化、消費税及びその増税、NHK放送料金強制徴収と言う現象にも現れている。格差の際限のない拡大政策が、貧困対策の美名の下に、実態は全く逆の事として平気で行われているのが現実である。所謂緊縮政策は、貧困層を犠牲にして、その富、つまり財産をむしりとって、全て富裕層へ回すのが実態である。イギリスでも日本同様のネオリベが深刻である。


従って、コロナ下の資本家への財政支援は、基本格差拡大にしかならず、資本家は、最も財政支援を不要とする社会的な単位である。市場の危機に際しても、彼らの愛する資本主義の法則に任せて淘汰されれば良いのである。それに対して、労働者全体へ何ら有効な富の再分配がなされているわけではない。大部分は、手当の申請で門前払いされ、引き伸ばされた挙句に、手遅れになるだけである。


What austerity has done is redistribute wealth from the poorest to the richest – this is not a secret; it is well known and well researched. Since 2008, the wealth of the richest one percent has been growing at an average of six percent a year and, in 2016, academics from the London School of Economics published research showing clearly that austerity had been selective, with cuts falling heavily on the poorest. 


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従って、私は資本の犬とは正反対に、現地日本人の労働者階級の普遍的利害の為にこれを日本語で公に説明する義務がある。香港では、中国語や英語では植民地時代からこの領域の専門知識は法律業界内では体系化されているし、サポートも受けられやすいのでそれらの言語では執筆する必要はない。


本論考は、香港人ではなく、香港の少数民族たる日本人同胞のみを対象にし、その他の民族や国籍を全く想定していない。一人でも、二人でも多くの可能な限りの人が母語で実際を理解でき、現地採用での香港での労働の準備やすでに労働に従事している者なら、その問題解決の一助になれば幸いである。


話を『被雇用者補償条例』(僱員補償條例の説明なしの人事部の傾向に戻せば、これは、日系の職業紹介会社達が素人並みに香港の労働法制といえば、雇用条例しか頭に無いことも悪影響している。日系企業は、基本的に日本人駐在員が少数管理職であり、現地感覚がない。いつでも現地労働者たちとの関係から遊離している事を、こうした断片的な偏狭な視野と傾向からも一目瞭然に理解できるのである。これは、彼らの専売特許である「労務管理」の立場からも、その反対物である資本主義社会の絶対多数派である勤労者、労働者、偉大なるプロレタリア階級全体の利害の立場からも有害であり、百害あって一利なしである。


ついでに言うと今では激減している駐在員、海外赴任さんたちは、派遣元の国の雇用契約であり、現地採用ではなく、3年経過以降は、元の契約による明記された場所がどこであれ、そこに限定する旨が明記されない限り、異動が通例可能になる。これは、国内における各地方事業所への本社からの管理職、正社員の異動による地方赴任と同様である。彼らの雇用主は香港の雇用主や香港登録の企業自体ではない。この点が重要。抽象的に、一面的には本国の雇用契約法、労働法適用の為、個人の雇用契約においては香港の法制と欠陥から来る労働問題は立ち現れない。


そしてそれは社会福祉が日本の法制下のものを香港でも享受できる点に顕著である。しかし、彼らと現地採用の労働者たちとの社内関係においては当然、現地固有の労働問題は発生するし、外交官ではないので、香港登録法人として現地法で会社ごと追究される。よく本国の本部採用という体裁で現地採用を法務部に関しては行うケースがあるが、その場合でも労働紛争時の対象は勤務しているその香港における事業所となる。これは、日本国内でも本社ではなく、支社でもなくても、勤務地にある事業所単位で労基法の追究の対象になるのと同様である。


まず、職業紹介会社や「労務管理」の顧問会社は機能を兼備している場合があるとは言え、法律事務所とは基本別概念である。彼らも弁護士、検察官、裁判官といった司法界の職業ではない。弁護士を会社代表にする為に不誠実で脱法的な工作で労資審裁処対策で、会社員として雇用する手口はあるが、人事部に入れ知恵をする香港の企業内部の法務部も基本同様に司法界の職業ではない。


それに対し、労働者、労働問題を処理する者、労働組合構成員など自身の利害として労働問題に取り組むものは、総じて当然彼らを制約するところの労働法制とその関係について論考する義務や必要がある。言論の自由の範囲である。労働者階級に労働問題や労働法制についての思考論考をやめさせる事はファシスト社会でしかありえない。


プロレタリアートはこう叫ぶ。「我々勤労者に奴隷、かかしになれと言うのか?資本家ども!」と。労働者階級の完全解放までは論考や批判は労働者階級の側から止むことは有り得ないのである。労働者は、資本主義社会においてその労働法制と自身の置かれている生産諸関係の真実を知れば知る程、それだけ資本家側の対処の難度を増す事ができ、労働者の損失を最小限に抑え、果ては資本主義自体の変革への道を自覚的に切り開く事ができる。問題は、まずは知識にある。その後は行動である。


本論考の主題である労災認定と補償は、香港の労働法制の中でも最も分量がある領域で、それだけで一冊の本になるぐらいである。人事部にも入社時の説明やオリエンテーションで言及されることは香港ではまずないので、自覚した労働者個人が主体的に、能動的に労災認定と労災補償の法体制を勉強、認識するしかない。


何処の資本主義社会でも暗黙の愚民政策が施行されていて、その証拠に義務教育で労働法が一般科目、必須科目として教えられていない。学生は、専門領域だけでなく、同時に自らの属する現地社会の労働法制を知り就職=就業に備えるべきである。これこそ、その専門領域の先人たちが後輩たちと本来シェアするべき知識と経験である。

労働問題は、純粋に経済問題のみではなく、現地の政治、法律及び経済の三領域を跨る多領域問題である。


さらに工業病の様に、医療保険衛生、から環境や資源、自然、家庭生活、倫理道徳の領域にまで関わる。最も人間社会の多岐、上部構造と下部構造、本質において全体に渡る問題が労働問題なのである。社会的な風紀の乱れや衰退は、須く雇用関係の病的現象にその源泉を見出すことができる。ブラック企業現象が好例である。


ブラック企業とその手口は、その全体と性質において、一言で言えば野蛮であり、企業間で言えば、市場における不当競争の形成になる


ブラック企業社会では、不当競争の競争がそれと結託、放任する公務員の腐敗と共に深刻化しており、何も、社会主義とかではなく、彼らの大好きな資本主義的にも深刻な問題なのである。「不当競争の競争」の自由放任は、資本主義の秩序の崩壊でもあるし、資本主義が極端に強まった抑制の効かない必然的な帰結でもある。これが末期の退廃現象であるのは言うまでもない。


資本主義社会を理解する事は、それを受容し美化正当化する事、永久に維持する事に賛成を意味しない事は、カール・マルクスの代表作『資本論』(マルクスのすべてが凝縮されている労働者必読の書)とその資本主義経済の研究が何より証明している。

同様に、資本主義社会の上部構造の一つである実定法と法体制の秩序とを理解する事は、労働法制に関してはそれに体現されている過去の労働運動の成果と失敗、資本家階級の階級意志を理解し、既に達成された諸成果を最大限利用しつつ、法の欠陥と不備不足から来る社会的な不利や損害を自覚的に最小限にする事、そしてさらに進んで変革を促す労働運動への個々の参画を意味する。

資本主義的生産関係では、本質的に労働者不利であり、労働問題において完全に損害不利益ゼロという事は資本主義下ではありえない理想である。労働問題ゼロはありえない、つまり資本主義的生産関係自体が剰余価値の搾取を絶対的に前提にしている以上、その様な生産関係自体が根源的な構造的労働問題だからである。

その他の労働問題は、その派生物、程度や規模の異なる種々雑多な個別の具体的諸現象に過ぎない。言い換えると、生産関係は、その総体運動だけでなく、その本質が反映する個別の具体的な諸現象も含めたダイナミックな運動概念と言える。

サービス社会では、サービスもそれ自体商品であり、生産消費活動の不可分の一環をなす形で資本利潤生成の運動に最終的に組み込まれている。これは、明白にも19世紀、20世紀より細分化した(つまりより高度化した)社会的分業の結果そのものである。愚昧な管理職は、今日のサービスと言う商品、サービスはそれ自体が商品である事を誤解している者が多い。サービス業主流の社会で、サービスが利潤を生んでいないと言うのは全体を無視したデタラメである。これは、簡単に反駁できる、ではなぜその部門をなくさないのかと。こんな倒錯観念を有した者が管理職になるのは滑稽である。それは自己否定を意味している事にすら気づかない輩の詭弁だからである。利潤の生成の運動と関係のない部門は企業に本質的に存在しない。

以上の困難下で、労働者は、まずは最も自身に関係する問題の起きている領域の法体制について自覚的に勉強するしかない


最悪の状態とは、消費におけるトラブルでも盲目的に資本家企業側の善意志を盲信してそれに身を委ねる事であり、それによる損益は本来少なくて済むよりも遥かに多いものとなりがちである。

香港のコロナウィルス感染の第二波は、3月11日の9件に始まり、4月11日の11件の1ヶ月で収束した。しかし、テストが相変わらず拡大していないことから感染の実態はその何倍もあると考えられ、感染の危機は去っていない。まして、香港だけ開放しても、他の地域の感染が収束しない限り、また第三波を将来するだけなのは自明の理である。


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China, Hong Kong SAR (May 1, 2020)

Coronavirus Cases:

1,040

Deaths: 4

Recovered: 859


URL:

https://www.worldometers.info/coronavirus/country/china-hong-kong-sar/


結論から言うと、新型コロナウィルス肺炎は現在に至っても労災対象に香港では認定されていない。しかし、『被雇用者補償条例』(僱員補償條例)の第36条では、もし労働者自身が感染と仕事の関係を証明できれば、その証明過程に難度があるが、補償の対象になる可能性がある。しかし、コロナ蔓延以前に、多くが基本的に労使紛争に発展している。つまり、民事訴訟になっている。つまり、職業病に指定して、行政的に労災認定可能にするよりも、労働者側にとってハードルが高く不利になっている。


36.

Saving in case of diseases other than occupational diseases

(1) Subject to subsection (2), nothing in this Part shall prejudice the right of an employee to recover compensation under this Ordinance in respect of a disease to which this Part does not apply, if the disease is a personal injury by accident within the meaning of section 5. (Added 19 of 1964 s. 5. Amended 44 of 1980 s. 15; 51 of 1980 s. 48)

(2) Subsection (1) does not apply to any incapacity resulting from— (a) pneumoconiosis or mesothelioma (or both) in respect of which compensation is recoverable under the Pneumoconiosis and Mesothelioma (Compensation) Ordinance (Cap. 360); or (Replaced 6 of 2008 s. 45) (b) noise-induced deafness in respect of which compensation is payable under the Occupational Deafness (Compensation) Ordinance (Cap. 469). (Replaced 21 of 1995 s. 41)


36.

關於非職業病的疾病的保留條文

(1) 除第(2)款另有規定外,如任何疾病是本部不適用者而是第5條所指的意外所致的身體受傷,則本部並不損害僱員根據本條例就該疾病追討補償的權利。 (由1964年第19號第5條增補。由1980年第44號第15條修訂;由1980年第51號第48條修訂)

(2) 第(1)款不適用於下述情況引致的任何喪失工作能力 —— (a) 根據《肺塵埃沉着病及間皮瘤(補償)條例》(第360章)可追討補償的肺塵埃沉着病或間皮瘤(或兩者);或 (由2008年第6號第45條代替) (b) 根據《職業性失聰(補償)條例》(第469章)須付補償的噪音所致的失聰。 (由1995年第21號第41條代替)


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Cap. 282 Employees’ Compensation Ordinance 



そこで、もし新型コロナウィルスを職業病として、つまり労災認定対象と規定すれば、労働者への行政的に確実な直接補償の対象になる。民事よりも行政手段の範疇の方が確実であり、労働者への不確定性、不利な負担がない。


香港工人健康中心主席の余德新によれば、今回の新型コロナウィルス肺炎蔓延下で、香港では70名以上が仕事が原因でコロナに感染している。主な職業は、接客業であり、個人タクシー運転手、外国籍ハウスキーパー、スチュワーデス等である。海外でも、大陸でも医療関係者も多数感染して死亡している事はニュースを見ているものなら周知の事実である。


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新冠肺炎未列為職業病 工會批港府卸責失職

https://hk.on.cc/hk/bkn/cnt/news/20200422/bkn-20200422150531646-0422_00822_001.html



2. 労働災害及び死亡時の賠償:『被雇用者補償条例』(僱員補償條例 


適用範囲:


全ての労働者が保障され、学生、農業労働者、香港で登録した船舶上働く船員、及び当該船舶上勤務するその他の労働者、そして香港の雇用主に雇用され、香港以外の場所で勤務する労働者も包含される。


雇用主の責任: