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香港労働 Hong Kong Labor Issues #15 日本人のための香港労働問題研究:資本家は労働者が毎年当年の年休を消化することを規定できるか?

Updated: Nov 3, 2023


香港労働 Hong Kong Labor Issues
FILE PHOTO: The Canton–Hong Kong strike (省港大罷工) 1925-26 © Public domain

雇用主が労働者の休暇を規定できるか?

資本家が、毎年労働者が消化するべき年休を規定し、なおかつ労働者が未消化の年休を棄権として取り消すことができるかは香港の現地雇用労働者にも法的に極めて重要な労働条件の質を構成する問題である。

健康で健全な労働環境を労働者に提供するのは資本家の基本的な義務である。そして、これも紛争時の重要な骨子の一つになる。重要なのは、労働条件の劣化を防止し、労働者の生活状態を少しでも最低限度の文化的生活以上の通常の人間的水準にするためにも、このような現行のブルジョア労働法制も自覚的に認識していなくてはならない。マルクスが資本主義社会を研究するのをブルジョア的だと言って非難する道理はない。

ソ連崩壊後のネオリベが蔓延する国際情勢では、日本も香港も労働者は必要最低限度以下の生活水準に置かれている。現行の労働法制に体現されている過去の労働運動の成果は最低限死守しなくてはならない。

資本家は労働者の休日を規定できる

雇用条例第41AA(8)条は、資本家は14日前の書面による通知で休日を規定できることになっている。(註1)しかし、香港の拙劣なマネージメントの特徴である、任意で何度も休日の変更を行わせないように、人事部と文書で、その都度正式な手続きを必ずしておくことは必須である。それを疎かにして労働者に益することはない。休日変更の回数制限がないことをマネージメントは利用する。人事部や上級の管理職へ如何に拙劣なマネージメントかを際限のない休日変更の数、手続き記録と共に示すべきである。

(ii)項では、本来労働者に付与しなくてはならない等価の有給休暇を与えなくてはならず、(b)では労使双方の協議で補償の休日を決めるが、協議が未決の場合は資本家が代替の休日を指定できる。

労働者が本当に休日を取っていない場合は、資本家は補償金を労働者に支払わなくてはならないし、棄権の状況が生じてはならない法制になっている。ここでは法定の年休に関して述べている。この年休の法制は日本よりも優れていると言える。

41AA.

Annual leave:

(8)

Where—

(a)

an employer continues to employ an employee after the expiration of a period during which annual leave should have been granted to him and the employer has not granted that leave, then at the option of the employee but subject to paragraph (b) the employer shall (whether or not proceedings have been taken for an offence under section 63(4)(e))—

(i)

pay to the employee, in addition to any pay due to him, compensation equal in amount to the annual leave pay which he would have received had the leave been granted so as to end on the expiration of the period during which it should have been granted; or

(ii)

grant the employee paid leave equal to the leave which should have been granted;

(b)

an employee opts under paragraph (a) to take paid leave, he shall take the leave on such day or days as may be agreed to by the employer and him or, if there is no such agreement, as shall be specified by the employer.

法定休暇に関して買い取りなしの日本とは異なり、刑事罰を招来する補償義務がある。
法定の年休と会社が付与する契約による年休は区別する

雇用条例第2条では、年休、annual leaveは契約により別途会社から付与される契約上の年休と法定年休は別物であり、区別されなくてはならないことが分かる。(註2)

2.

Interpretation:

annual leave (年假) means the annual leave provided for in Part VIIIA;

(Added 53 of 1977 s. 2)

annual leave pay (年假薪酬) means the annual leave pay required by this Ordinance to be paid in respect of a period of annual leave and any sum required to be paid under section 41D;

(Added 53 of 1977 s. 2)

したがって、雇用契約上この二つ(法定の年休と会社の任意で付与する年休)は別個である旨が明言されないために紛争になりやすい。雇用主側の任意でどれが法定ので、どれが任意のものかを判断されることがあってはならない。

また、計算方法は契約上異なることが明記されない限り、基本法定の休日と同じ賃金計算になる。

判例法理:Kwan Siu Wa Becky and others v Cathay Pacific Airways Limited (HCLA 3,4,5,7,8,9&2009) では、法定年休は、法定の年休より多く出た年休部分ではないとされ、合約の年休の賃金計算が法定年休と異なる旨が計算方式とともに明記されていない場合、労使ともに計算方式は法定の計算方式で合意したものとみなし、区別しないで計算すると、法廷で判断された。(註3)

未決の年休問題:法定年休を先に消化したか?合約年休を先に消化したか不明!

最高裁によれば、法定/法例年休と合約年休は別々であり、別々に処理できる。そして、資本家は合約に基づき、未消化の期間切れの合約年休を取り消すことができる。

従って、労働者は棄権をすることなく、全て消化するべく早い時期に消化スケジュールを組み実行に移すべきである。


Notes

1.See the article and carefully read the how capitalist have to give the leaves.

2.See Labor Ordinance on Leave policy.

3.See the court case.

香港労働問題研究論考30章

(以下リンクより各論考へ)

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香港で労使紛争に遭った場合の基礎的な注意事項

1、もし、雇用主と労働条件で労使紛争が起きた場合、直ぐに衝動的に書面や口頭で雇用契約を終了しないこと。当然、香港の人事部はマネージメントの追随及び人事の事務処理代行の域をでない低劣さが顕著なので、まずは、労働組合や労働問題の経験ある弁護士に一定期間相談するべきである。その上でも終了はいつでもできる。人材会社の連中は、日本同様労働問題の相談相手ではない。連中は、広告主である企業の人事部の意向と方便しか一面的に顧みない。

2、もし、雇用主に解雇された場合、いかなる文書にもサインしないこと。また、何かにサインする前に、自身に不利ではないかまず内容をよく見ること。不明な点は、質問しはっきりさせ、解答が不明瞭ならばサインは拒否するべきである。つまり、理解できないものは拒否すること。下劣な香港マネージメントは手口としてあからさまな詐欺を働く場合もあり、それはサイン無効として追究する道を開く。ここで、重要なのは、サインした全ての公式、非公式の文書はコピーを要求する権利があり、コピーを渡さないならばサインしないことである。このような卑猥な資本主義の犬に屈するくらいならばサインや合意を破棄するべきである。その方が労働者の精神的利害及び社会的契約上の権利の実現と言える。日本の求人詐欺の手口は基本的に香港でも存在している。多くの多国籍企業のアジア太平洋地区の本部は香港であり、人事部が実は香港という大企業も少なくない。手口自体の共通性はここから来ている。

3、紙媒体か電子媒体かを問わず、全ての企業関連の文書を保存すること。これは、雇用契約書から、就業証明、給与支払報告書、税報告書、解雇通知書などを含み、その後労働者の受けるべき権益を要求する基礎になる。


References


1.《勞資審裁處條例》https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap25!zh-Hant-HK

2.香港法例第57章《僱傭條例》僱傭保障Q&A http://www.labour.gov.hk/tc/faq/cap57k_whole.htm

3.勞資審裁處表格 http://www.judiciary.hk/tc/crt_services/forms/labour.htm

4.勞資審裁處條例 https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap25!en

5.第338章 《小額錢債審裁處條例》https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap338

6.Cap. 347 LIMITATION ORDINANCE https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap347!en?INDEX_CS=N

7.Cap. 149 General Holidays Ordinance https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap149

8.判例集 https://www.elegislation.gov.hk


雇用条例の全文は、以下の二つのリンクが有用である。日本語は、完訳済みである。


English: https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap57

Chinese: https://www.labour.gov.hk/tc/public/ConciseGuide.htm

Image Source: Public Domain

Statements

This series of articles about HK labor issues is written by Japanese due to supporting Japanese workers in Hong Kong where differs from Japanese working environment. Moreover, there is no labor consultant for Japanese workers in Hong Kong while facing blood sucking Japanese recruit agents and overseas Japanese 'Black Kigyo' (Evil Companies).  

Any part of this report may be disseminated without permission, provided attribution to Ryota Nakanishi as author and a link to www.ryotanakanishi.com is provided.

注意:香港には、日本人のための労働相談所はない。また、総じて労働問題対策の出版物は皆無に等しい。日本語だけでは、極めて危険な状態である。香港でも会社の人事部、就職エージェントや企業の人事コンサルタントなどはすべて行為において資本家側であり、自分たちも労働者であるのに、むしろ労働者と敵対するので、要注意だ。会社外の労組へ相談するべきだ。香港では日本人で労働問題を論じている者がいないと言うことはできない。私は永久に労働者階級のために階級闘争を戦う。階級闘争とは、労働者の階級的利害のための一切の社会的な闘いである。


香港労働 Hong Kong Labor Issues
Ryota Nakanishi's Hong Kong labor law knowledge was qualified by professional examination by HKFTU in 2019.
Ryota Nakanishi's Hong Kong labor law knowledge was qualified by professional examination by HKFTU in 2019.
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