top of page

香港労働法 Hong Kong Labor Issues #59 日本人のための香港労働問題研究:雇用条例 (Employment Ordinance) VB:日本語版

#Translation

FILE PHOTO: Coffee barista © WiX
FILE PHOTO: Coffee barista © WiX

労働ニュース及び政策上の変化或いは特色


今回は、例の如く労務人事管理コンサルタント業の類に、無責任にも「退職後老後生活保障の年金制度に相当する」 などと安易に粉飾されているMPF(強積金)制度に関してここでは簡潔に概括する。


ついでにその他極め付けの誤った最も蔓延している固定観念に言及すれば、「雇用条例が労基法なのだ」 と言う。香港の雇用条例は、労基署という労働警察が監督する刑法と密接な労働基準法ではなく、労働者が問題を解決する上では、警察権のない労工処(香港の行政・法定機関では調査権や警察権、送検の機能が各自細部に分離して付与されているか外されている上に、「調査」と一概にいっても権限に各自無視できない差異がある;ちなみに香港の検察庁は律政司)が基本的な解決手段として、労使間の任意の調停を提供するぐらいであり、それ自体民事訴訟による解決が前提にされている民法扱いなので、民法である日本の労働契約法の性質と近似し且つ同様であるというのが最も適切な比較である。労基法と雇用条例の差異は、刑法と民法の差異である。悪魔は細部に潜んでいるのである。これは、現地で労働問題に実際に取り組む立場になければこの差異の意味する所のものが体感できない。

しかし、安易な日本国内の延長で香港社会の制度に対するのではなく、あくまで香港社会の制度という特殊性を理解する姿勢が基本であるし、労組であれ、人事部であれ、本物のプロである。


話題が逸れてしまったが、MPF(強積金)制度とは上場企業の社会福祉制度というべきであり、労働者は各自保険会社・金融機関(基本、多国籍企業)に上場企業への投資(カテゴリーのみ選択できる)へ否応なく同意し、毎月MPF(強積金)契約した金融機関が代行して投資する仕組みである。つまり、賃金が単純に社会的な老後積み立てにならず、上場企業への恒常的な投資という有難い上場企業のための社会福祉制度になっている。労働者側が最終的に受領できるのは、数ヶ月の家賃にしかならない雀の涙の額であり、何が老後保証なのかというのが香港の労働者達の積年の大問題である。そして、こうした疑問、議題は当然資本の側から争点を外され、圧殺されている。


それは、まずMPF(強積金)制度の生みの親が、香港史上に名を残している大汚職天下り官僚元政務司司長許仕仁である点が何よりも本質を物語っている。これは、不動産独占資本の寡占体の一つである新鴻基地產が、2007年4月より土地の購入と申請プロセスに乗じて、巨額賄賂を送り、香港城市規劃委員會に便宜を図らせ、2012年3月29日に関係者が収賄贈与(pay to play)で逮捕摘発された巨額汚職事件「2012年新地風暴」である。官民共謀という支配体制が事実であるのを物語っている。


MPF(強積金)はネオリベラリズムの傑作である。賃金を、上場企業群の投資に社会的に流用するのは「労働者の社会福祉制度でございます」という建前とは真逆の行為である。資本主義としても非上場企業との不公平にもなっているからだ。


全労働者の受給する賃金からの強制的な供出が、一握りの上場企業を支える体制が、MPF(強積金)である。

日本の年金も今はとっくに上場企業への投資、株購入に流用されているのは全く同じ性質である。例えば、意外に日本国内の「左翼」達は全く騒がなかったが、退休金投資基金(GPIF)は中国で金融危機を引き起こしている最大手の不動産会社恒大に約6億人民元(約107億6,059万4,702円)ほど既に投資し、債券購入しても回収難に陥っている。


恒大 (03333) 債務危機蔓延至日本,日本股市周二(21日)曾因恒大債務危機急挫。日本政府退休金投資基金(GPIF) 被揭持有恒大債券,持債券規模在一眾海外投資者中排名頭10。日本央行行長黑田東彥周三(22日)表示,關注恒大的經營危機為國際金融市場帶來的影響。(1)


最後に、MPF(強積金)の旨味は上場資本家だけでなく、全ての企業にとってはその積立金を整理解雇における遣散費や、5年以上の長期勤務に対する長期服務金という労働者の法定権益に対して相殺させてしまう事ができる点である。つまり、


労働者は自身の賃金からの積立金を、本来額面通り受給できるはずの遣散費と長期服務金の控除に利用されてしまい、それら全てに関する経済的権益を損ねる制度設計がなされている点である。

最近、MPF(強積金)によるそうした法定権益に対する相殺の額が年々拡大しているというニュースがある。


強積金對沖數字再創新高!強積金被用以抵銷遣散費及長期服務金的機制(俗稱對沖機制)向來為人詬病,憂不斷蠶食打工仔累積供款,新冠肺炎疫情打殘本港各行各業,不少公司倒閉或裁減僱員,今年首3季,打工仔的強積金對沖金額高達54.2億元,創有紀錄以來新高,單計疫情兩年(2020及2021),首3季被對沖的強積金供款已高達約100.1億元,較2018及19年同期總額上升了46.1%。(2)


このMPF(強積金)の相殺額の増大は、確かな経済の実際の状態の指標の一つでもある。つまり、整理解雇が多ければ多いほど、長期勤務の離職者が多ければ多いほどこの相殺額が跳ね上がる道理だからである。コロナと大移民ブームが貢献しているとしても、これは好景気の現象などではなく、労働市場の実相、経済の如実な後退・衰退を示す現象である。そして、この相殺額の社会的な総額が香港の労働者達の不幸の、苦しみの、数量化された社会的な等価物でもある。不幸や苦しみは、実は量的にも測れるのである。

さらには、投資に流用されてしまう香港の強積金や日本の年金は当然減額傾向にある。なぜなら、投資の損失がその基金から賄われ、原額保証が欠如しているからだ。本人が自発的に直接投資をするわけではないのに、投資リスクは金融機関側は負担しなくていい形になる。しかも、金融機関側では管理費として永久的に強積金から控除するので、金融機関にとっても良い社会福祉制度になっている。この管理費問題もニュースになっている。


香港推行強積金制度已逾20載,但不少打工仔均忽略這筆血汗錢,更有多達63億元錢冇人攞!根據強制性公積金管理局數字,截